ドナルド・キーン「日本人になったからには日本の悪口をどしどしいう」
近年の閉塞した言論状況のなかでは、政権の方針に異議を唱えるような発言をすれば、「反日」や「日本が嫌いならこの国から出ていけ」といった言葉が浴びせられる。
しかし、「日本人になったからには、これまで遠慮して言わなかった日本の悪口も、どしどし言うつもりです」と宣言したうえで、実際、日本の政治や社会でおかしなところを指摘するキーン氏の姿勢は真っ当なものだろう。
自分の属している国であり社会だからこそ、おかしなところは指摘するし、権力に問題があれば批判する。それは、民主主義国家として当然の行為だ。批判内容の検証以前に批判するその態度そのものが批判されるような社会は民主主義が根付いているとはいえない。
権力や時の体制に従順な奴隷根性を内面化し、権力を疑うことすらしない者が少なくない現在の日本社会において、キーン氏が発した「日本人になったからには、これまで遠慮して言わなかった日本の悪口も、どしどし言うつもりです」という主張は、この国に巣くう病のとても根源的なところを突いていると感じるのである。
キーン氏の訃報に際してわたしたちが語るべきなのは、彼が日本を愛したということだけではない。本当の意味で「日本を愛する」とはどういうことか。問題点を省みず「日本スゴイ」とひたすら盲目的に礼賛することなのか、「日本人になったからには日本の悪口も、どしどし言う」ことなのか。キーン氏の発言から、あらためて考えるべきだろう。
(編集部)
最終更新:2019.02.25 11:19