2月6日参院予算委員会での安倍首相(インターネット審議中継より)
「私は総理大臣ですから、森羅万象すべて担当しておりますので」
安倍首相が国会で言い放ったこの発言が、大きな話題を呼んでいる。Twitterでは「森羅万象」がトレンド入り、「#森羅万象担当大臣」や「#森羅万象内閣」などのハッシュタグとともに、こんな投稿が相次いでいるのだ。
〈ついにゴッド宣言〉
〈現人神、平成にもいたんだねぇ〉
〈安倍総理がついに地震や台風など森羅万象を司る神であらせられることを自白される〉
〈森羅万象を司る神なら四島返還など簡単なはずなのにねえ〉
〈移植云々サンゴマンになったり森羅万象ゼウスマンになったり、結局安倍さんはどうなりたいのですかね。てか、森羅万象を司っているのに何で嘘つくの?〉
森羅万象とは「宇宙間に存在する数限りない一切のものごと」(『広辞苑』第7版)の意。それを「担当している」と自称するのだから、「すわ全知全能の神にでもなったつもりか!」と突っ込まれるのも当然だろう。
いったい安倍首相はどういう意図で、こんな「神宣言」とも言えるような発言を行ったのか。改めて振り返ってみよう。
発言があったのは2月6日の参院予算員会でのこと。国民民主党の足立信也議員が、厚労省の毎月勤労統計不正調査問題をめぐって、安倍首相に特別監察委員会の報告書を読んだのか質した。安倍首相が「そのものは読んではおりません。私は概要について秘書官から報告を受けている」と一切悪びれずに答弁した。
そこで、足立議員が「やっぱりこれだけ大事なことなのに、報告書も読まれていない」「総理としては、報告書を読まれていないので残念なのですが、これは第三者委員会とは認めないという認識でいいですね?」と追及すると、安倍首相はまたもや平然とこう答えたのだった。
「あの、総理大臣でございますから、森羅万象すべて担当しておりますので、あの、報告書をですね、まあ様々な、これ日々様々な報告書がございますが、それを全て精読する時間はとてもない、わけでございますし、世界中から、で起こっている、まあ電報等もあるわけでございます。ということはご理解いただきたい、とこう思います」
つまり、“自分は森羅万象(宇宙のすべて)を「担当している」が忙しいので第三者委員会の報告書は読めませんでした”、と言い訳しているわけである。どうしてこの文脈で「森羅万象」という単語が出てくるのか意味がわからないが、実は、安倍首相が国会で「森羅万象」という言葉を口にするのはこれが初めてではない。
たとえば昨年には、政府の裁量労働制データ改ざん問題を追及されて「私の場合は、もちろんこの予算について、森羅万象全てのことについてお答えをしなければならない立場ではありますが、全てのことについては、しかし、それは全て私が詳細を把握しているわけではありません」(2018年2月20日衆院予算員会)と居直り。その前年にも、森友・加計学園問題に関して「丁寧な説明」がされていないと詰められて「政府が取り扱っている森羅万象全てを私が説明できるわけでは当然ないわけでございますから」(2017年11月28日衆院予算委員会)などとのたまっていた。
ようするに、安倍首相はどうも「森羅万象」という言葉を“いっぱいやることがあるからチェックしきれないんだよ、許してね、テヘッ”という文脈で使っているらしいのだ。
安倍首相といえば、「云々」を「でんでん」、「背後」を「せご」と読むなど、日本語の基礎知識がないことで有名だが、しかし、この“森羅万象担当発言”はたんなる無教養という問題だけではなく、安倍首相の傲慢な姿勢が漏れ出たものではないのか。