がんばっている『相棒』に比べて、報道やワイドショーは忖度だらけ
このように、安倍政権の問題点や暗部を随所に盛り込み、見事に作品に昇華させた『相棒season17 元日スペシャル』。しかも、今回の作品がすごいのは、たんに現政権の不正を風刺するというだけでなく、メディアが追及しないその構造的問題にまで踏み込み、官僚の忖度が生まれる状況を再現させていたことだ。
脚本は昨年同様、太田愛氏。太田氏はこれまでにも共謀罪、特定秘密保護法、警察内部の抗争、公安の暗躍などの現実の警察が抱える問題を作品に投影することで定評のある脚本家だが、今回もさすがといっていいだろう。
ただし、テレビ朝日でもこうした気骨を見せているのは、ドラマ部門だけだ。『報道ステーション』や『羽鳥慎一モーニングショー』などニュースやワイドショーでは、忖度官僚と同様、政権を忖度し、批判報道がどんどん抑えられているのが現状だ。
物語の最後、右京と神崎がこんな会話を交わしている。
右京「ことを起こせば、あなたはキャリアすべてを失うとわかっていたはずです。何があなたにそこまでさせたのでしょう」
神崎「私は路上でも刑務所でも歌ってきました。私は法には従わない」
右京「弱い者の嘆きに従う。ええ、あなたはそういう人です」
「弱い者の嘆きに従う」というのはジャーナリストにこそもっとも必要な姿勢だと思うが、いまのマスコミにはもはやそんな人間はいないということだろう。
(伊勢崎馨)
最終更新:2019.01.05 02:43