一国の総理がPRする『日本国紀』にあったWikipedia丸写しの記述
たとえば、いま筆者の手元にある『日本国紀』(1刷)は、国旗の「日の丸」についてのコラムで〈日輪のマークは天下統一の象徴であり、源平合戦の折も、平氏は「赤字金丸」、源氏は「白地赤丸」を使用した。それ以降、「白地赤丸」の日の丸が天下統一を成し遂げた者の象徴として受け継がれていったといわれている〉と書いてある。一方、Wikipediaの「日本の国旗」の項目では、〈古代から国家統治と太陽は密接な関係であることから日輪は天下統一の象徴であり、平氏は御旗にちなんで「赤地金丸」を、源氏は「白地赤丸」を使用した。平氏が滅亡し、源氏によって武家政権ができると代々の将軍は源氏の末裔を名乗り、「白地赤丸」の日の丸が天下統一を成し遂げた者の象徴として受け継がれていったと言われる〉と書いてあった。
見ての通り、使用している語彙のみならず文章構成もほとんど一緒で、とりわけ〈「白地赤丸」の日の丸が天下統一を成し遂げた者の象徴として受け継がれていったといわれている〉(『日本国紀』)の部分はWikipediaの記述から〈言われる〉をひらがなにしただけだ。
他にネット上で指摘されている「コピペ疑惑箇所」も同じような調子だ。前述のウェブサイト「論壇net」による11月21日付けの検証まとめ記事によれば、少なくとも全体の2.8%が「コピペ改変」であると推測されるという。百田センセイは〈僅かなミスを指摘して、「嘘本!」呼ばわり。全体の1%にも満たないwikiからの引用を取り上げて、「コピペだ!」と印象操作〉(11月24日のツイート)などと逆ギレしているが、そもそも「引用」の要件を満たしていないし、1%もあれば十分問題だろう。
もちろん、この「コピペ疑惑」についてはネットメディアだけでなく毎日新聞もとりあげるなど、大きな話題になっていた。安倍首相が、そのことを知らないわけがない。
しかし、安倍首相にとってはそんなことはどうでもよかったのだろう。なぜなら、『日本国紀』はそもそも、安倍首相の悲願である憲法改正に向けたプロパガンダとして、オトモダチの百田尚樹と幻冬舎・見城徹社長が仕掛けた本だからだ。