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徴用工問題は本当に「解決済み」だったのか? 日本政府が60年以上にわたり隠蔽してきた日韓基本条約の欺瞞

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強硬姿勢の安倍首相だが…(首相官邸HPより)

 徴用工問題が波紋を広げている。周知のように、植民地時代の韓国人徴用工が日本企業に求めた賠償について、韓国の大法院(最高裁)は被告の上告を棄却し、請求を認める判決を下した。安倍首相は即座に「ありえない判断」と批判、河野太郎外相は「100パーセント韓国側の責任」と追及を緩めない。安倍政権は判決を受けて、提訴されている企業向けの説明会を開催し、損害賠償や和解に応じないようとのレクチャーを公然と行なっている。

 影響はいたるところで表面化している。岐阜県岐阜市では、教育と文化に関する友好交流の合意書を交わす予定だった韓国側代表団の受け入れを延期に。国内の大マスコミは揃って韓国側を批判する論調一色にそまり、テレビではキャスターやコメンテーター、芸能人までもが連日、韓国批判を展開している有様だ。

 そもそも「朝鮮人徴用工問題」とは、戦前の大日本帝国が、植民地として支配していた朝鮮半島の人々を強制的に動員し、炭鉱など過酷な環境での労働を強いたこと及びその人権侵害に対する、賠償ないしは補償をめぐる問題である。

 ところが、メディアはその実態にはほとんど触れようとせずひたすら「徴用工問題は日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決済み」という主張を繰り返している。その解決のために、日本政府は韓国政府に3億ドルを無償供与し、2億ドルを長期低利貸付したのだ、と。

 たしかに、1965年の日韓基本条約の際、両国政府によって締結された「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」(請求権協定)の第二条一項には「完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」との文言が含まれており、いわゆる韓国側の「対日請求要綱八項目」のなかにも韓国人徴用工の損害賠償請求権等が記されていた。

 しかし、改めて考えてみると、請求権協定のいう「完全かつ最終的に解決された」請求権とは、いったい何を対象として請求する権利なのか。そして、日本政府が韓国政府に供与した無償3億ドル、貸付した有償2億ドルという大金は、いかなる目的のものだったのか。

 たとえば、請求権協定の前文には〈両国及びその国民の財産並びに両国及びその国民の間の請求権に関する問題を解決することを希望〉するとともに〈両国間の経済協力を増進することを希望して〉結ばれた協定であると謳われている。また、第一条には〈供与及び貸付けは、大韓民国の経済の発展に役立つものでなければならない〉との但し書きがなされている。日本政府の解釈によると、経済協力と請求権問題の間に法的な相互関係は存在しないという。

 すなわち、日本政府としては韓国との国交正常化にあたって、あくまで経済強力として位置付けたものであって、実際に当時の日本国会でも「賠償とは同一視できない」との立場を明確にしていた。また、請求権協定の条文を読めばわかるが、そこには日本の過去の行いに対する「謝罪」「お詫び」「反省」はもちろん「責任」の類の言葉も一切記されていない。これはなぜか。

 実のところ、その点が日韓基本条約の性質における根幹の問題と深く関係している。

 大マスコミはひたすら「判決は日韓関係を悪化させる」と連呼してネグっているが、日韓基本条約から読み取れるのは、1910年の韓国併合以降の両国の歴史に対する日本側の謝罪と責任の回避、とりわけ植民地支配の正当化の結晶である。そして、これこそが1965年の条約締結以来、現在まで、日本政府が「解決済み」とのフレーズによって隠滅しようとしてきたものに他ならないのだ。

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