海上自衛隊ホームページより
旭日旗を巡る日本政府の対応が、またしても大きな外交問題に発展している。11日に韓国・済州島で行われる「国際観艦式」にあたり、海上自衛隊の旭日旗掲揚を事実上、自粛するよう求めた韓国政府に対し、日本政府が猛反発。5日にはとうとう護衛艦の派遣を取りやめると正式決定した件だ。
言うまでもなく、海上自衛隊の艦旗である旭日旗は、戦中・戦前の帝国海軍からそのまま継承したもので、日本の軍国主義や帝国主義の象徴だ。これまでも、サッカーの試合などでサポーターが旭日旗を掲げて国際問題化してきた。韓国との過去の歴史を考えれば、要請に応じての自粛するのが普通だろう。それを護衛艦派遣取りやめとは、大人気ないにもほどがある。
そんななか、意外な人物がこの旭日旗問題について正論を口にして、話題となっている。映画やテレビで独特の存在感を発揮しているコワモテの演技派俳優、國村隼だ。
國村隼は、リドリー・スコットの『ブラック・レイン』やタランティーノの『キル・ビル』のほか、香港映画や韓国映画などにも複数出演してきた国際派でもある。近年ではナ・ホンジン監督作『哭声/コクソン』での怪演で高い評価を受けたことも記憶に新しい。ちなみに、『シン・ゴジラ』では自衛隊の統合幕僚長役を演じていた。
そんな國村が5日、韓国で釜山国際映画祭関連の記者会見に参加。韓国・中央日報によれば、旭日旗問題について質問を受けた國村はこのように話したという。
「旭日旗というのが日本海軍自衛隊の伝統旗だと知っている。だが、われわれより先の世代、特に韓国の方はこの旗を格別に捉えているということも深く理解している」
「自衛隊としては旭日旗が自身たちの伝統なので曲げることができないだろう。しかし、過去の歴史を一度だけでも理解すればどうだろうか、個人的には考えている」
國村のいう旭日旗の「過去の歴史」が、大日本帝国による韓国併合とアジアへの侵略戦争を指していることは解説するまでもないだろう。さらに國村は、現在の安倍政治についてもこう感想を語ったという。
「現在の日本政府は旭日旗だけでなく、すべての面で保守的な立場を持っている。日本の中でも様々な社会的な問題を起こしているのが事実だ」
「この問題については俳優としてよりも、一人の個人として望ましくないと考える」
日韓両方の立場を尊重しつつも逃げることなく、旭日旗の歴史的経緯を踏まえたうえで誠実に自身の考えを語り、その背景にある安倍政権による日本社会の保守化の問題にまで踏み込んだ國村。言葉を慎重に選んでいるが、その内容は至極真っ当だろう。
ところが、やはりというべきか、国村は、Twitterなどでネトウヨから総攻撃を浴びせられることになってしまった。
〈売国奴國村を許すな!〉
〈所詮このオヤジも、吉田鋼太郎と同じ、雰囲気だけの俳優。演技力なんざ下の下じゃねえか。その上脳みそは極左ときた。國村隼、テメエは恥を知れ〉
〈釜山の映画祭に出席している時点で、韓国寄りの意見しか言えないだろう 目先の金のために、売国奴に成り下がったな 惨めな男〉
〈國村隼さん好きな俳優さんだったけど韓国の傀儡で日本の国賊だったとは残念〉
〈反日分子は追放しろ!〉
この程度の発言で「売国奴」「国賊」「反日分子」呼ばわりされ、その演技力まで否定しにかかるとは、毎度のことながら連中のファナティックさには呆れ果てる。
だが、狂っているのはネトウヨたちだけではない。今回の問題はそもそも、連中の親玉である安倍政権の対応がおかしいのだ。