関空の民営化を「自分の手柄」と吹聴していた橋下徹はうってかわって沈黙
いずれにしても、関西空港の未曾有の機能喪失と混乱は、歪な民営化やその後のプロパー社員の退職と決して無関係ではないだろう。前述した空港閉鎖決断の遅れやタンカーの給油強行なども、経営効率を優先するあまり、安全性を軽視して犯した判断ミスなのではないかという気がしてならない。
当時の状況からして、民営化そのものを否定するつもりはないが、業者の選定も含め、インフラに不可欠な安全性への意識が低かったことは明らかだ。
ところで、この関空の民営化をついこの間まで、自分のお手柄だと吹聴していたのが、ほかでもない橋下徹・元大阪市長だ。最近も、雑誌「正論」(産経新聞社)で、「僕も首長時代に少しは「実行」できたという自負があります。関西国際空港の経営改善策として(中略)伊丹空港と関空の経営統合を実現しましたが、それが今、関西経済にプラスに働いています」「いちいち国民が政治家さまのおかげですと感謝するのはおかしいですからね。ただ、僕からすると寂しい気持ちも正直あって、ついこの間も前原さんと空港について振り返った時、「結構、政治家ってむなしいですよね」という結論に達しました(笑)」と自慢げに語っている。
しかし、筆者は当時、民営化のプロセスをかなり深く取材していたが、橋下氏が積極的に本件に関わった、という話を知らない。橋下氏は前原大臣のスキームに乗っかって、大阪市や大阪府の関西国際空港株売却に同意したという程度の認識しかなかった。だいたい当初は関空に米軍基地をと言っていたくらいなのだから。
まあ、それでも、橋下氏が自分の手柄と言うなら、そうなのだろう。しかし、それなら、思い入れのある関空がこんな事態に陥ったのだ。何か一言コメントしてしかるべきだろう。と思って、彼のツイッターをみているが、いまのところ、橋下氏が関空の災害に直接言及した形跡はない。
(成井公史)
最終更新:2018.09.08 12:56