今月23日夜、徳島県に上陸した台風20号に対して安倍首相は、西日本暴雨の時とは別人のような対応をした。上陸前の23日に非常災害対策本部を開いて厳重な警戒の徹底を指示したのだ。
西日本豪雨の際、気象庁が記録的豪雨の予報(警告)を出した7月5日の夜に安倍首相は「赤坂自民亭」の宴会に参加、翌6日には参院でカジノ法案を審議入りさせて石井啓一国交大臣を張り付かせ、非常災害対策本部が設置されたのは気象庁の警告から2日以上経った8日8時。「豪雨災害より総裁選優先」「初動の遅れが被害拡大を招いた」と批判されたが、それに比べて今回は、上陸前の23日に非常災害対策本部を開いて厳重な警戒の徹底を指示したわけだ。
しかし、そんなことは当然であり、これで西日本豪雨時の「初動の遅れ(犯罪的職務怠慢)」が免責されるわけではない。未だに安倍首相は、西日本豪雨の対応について「政府一丸となって災害発生以来、全力で取り組んできた」と非を認めず、初動遅れと被害拡大の関連性を否定している。だが、その後の筆者の現地取材、検証でも、そんな言い訳は大嘘だったことが明らかになったからだ。
●「豪雨被害は安倍首相の“赤坂自民亭”初動遅れによる人災」と被災者が!
ダムの緊急放水後に床上浸水の被害を受けた岡山・広島・愛媛の被災者は、次のような“人災説”をそろって口にしていた。
「ダムの緊急放水があまりに急で、一気に水位が上がって車を高台に移動する時間すらなかった。もっと早めに緩やかに放流をしていれば、ピーク(最大)放水量は半分ぐらいで済んで、こんな大きな被害は出なかったはずだ。なぜ安倍首相は5日夜の赤坂自民亭への出席をキャンセル、すぐに非常災害本部を設置して『ダム事前放水(貯水率低減)』を指示しなかったのか!」
W杯サッカーにたとえれば、監督が大会屈指の強敵との対戦前日に作戦会議を開かずに、監督再任の鍵を握る面々との飲み会を優先、コーチもフォローしなかった結果、選手の実力を十分に発揮できずにオウンゴールを連発、惨敗をしたようなものだ。「こんなダメ監督(安倍首相)とコーチ(石井大臣)は交代させろ!」という声が出て当然だ。
“A級戦犯コンビ”の安倍首相と石井国交大臣の初動遅れ=犯罪的職務怠慢が被害拡大を招いたことは、岡山・広島・愛媛の「ダム放水量の推移(データ)」を見ると、一目瞭然だ。いずれの県でも「事前放流をしてダムを出来るだけ空に近づける操作をせず、記録的豪雨でダムがすぐに満杯状態となり、決壊を避けるために一気に緊急放水をした」という共通点があったのだ。
野党も、安倍首相の初動遅れ、職務怠慢による人災に注目している。全国初の流域治水条例をつくった嘉田由紀子・前滋賀県知事、河川工学者の今本博健・京都大学名誉教授と大熊孝・新潟大学名誉教授は8月7日、堤防決壊で死者51名の被害を出した岡山県倉敷市真備町地区を訪れ、国交省岡山河川事務所や岡山県の担当者から説明を受けたが、ここに国民民主党の柚木道義衆院議員(その後22日に離党し現在は無所属)、立憲民主党の高井崇志衆院議員と山崎誠衆院議員も同行。下流域(真備町地区など)の洪水被害を招いた可能性のあるダムの緊急放水について、嘉田氏が国交省の担当者をこう問い質した。
「河川法52条では、河川管理者(国交省)は洪水の恐れがあるときは、ダム設置者(岡山県や中国電力)に対して、必要な措置をとることを指示することができるはず。なぜ今回、やらなかったのですか?」