国連トップのグテレス事務総長とはあまりに対照的な安倍の態度
まるで被爆者を敵視しているとしか思えないほどの振る舞いだが、その一方で、長崎の式典には、初めて国連のトップが出席。アントニオ・グテレス国連総長はスピーチのなかで、安倍首相とは対照的に、はっきりと核禁止条約に言及。昨年には、冷戦終結以降で、もっとも巨額の金額が核兵器の近代化に注ぎ込まれた一方、核軍縮が失速しているとしたうえで、「多くの国が、昨年、核兵器禁止条約を採択したことで、これに対する不満を示しました」と述べ、「私たちみんなで、この長崎を核兵器による惨害で苦しんだ地球最後の場所にするよう決意しましょう」と訴えたのだ。グテレス事務総長は、前日の8日にも被爆者団体代表らと面会し、「同じ悲劇が二度と起きてはいけない。私も皆さんと一緒に世界に声を大にして伝えていきたい」と語っていた。
被爆者に寄り添い、核軍縮に向けて具体的なリーダーシップを発揮する国連トップと、唯一の戦争被爆国の首相のあまりに対照的な態度。なぜ、ここまで安倍首相は核兵器を禁止する国際条約を認めようとしないのか。それは、たんに日本が米軍の核の傘に入り、現政権がその米国にべったりだから、というだけではない。
本サイトでは何度かお伝えしてきたことだが、実は安倍首相は、官房副長官時代の2002年、早稲田大学で開かれた田原総一朗氏との対話のなかで「憲法上は原子爆弾だって問題ではないですからね、憲法上は。小型であればですね」と語っている(「サンデー毎日」02年6月2日号/毎日新聞出版)。また、2006年には「核兵器であっても、自衛のための必要最小限度にとどまれば、保有は必ずしも憲法の禁止するところではない」と答弁書に記すなど、もとより積極的な核武装論者なのだ。
第二次政権以降はその核保有への欲望をむき出しにすることは控えるようになったが、それでも本質は少しも変わっていない。事実、今年2月にトランプ米政権が小型核の開発を含む新たな核政策指針を発表したことに対し、安倍政権は「高く評価する」との外務大臣談話を出している。
一方、昨年には核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)がノーベル平和賞を受賞したが、安倍首相はいまだにICANとの面会やお祝いの電話すら入れていない。
もはや騙される人はほとんどいないだろうが、安倍首相に国際社会の核軍縮を進める気など一切なく、むしろ、核兵器を所有したい、米国にももっと核兵器開発をしてもらいたい、というのが本音なのだ。
「唯一の戦争被爆国として『核兵器のない世界』の実現に向けて、粘り強く努力を重ねていくこと。それは我が国の使命です」
安倍首相は長崎でそう嘯いたが、ならば、そんな使命感などつゆほどもない総理大臣には一刻も早く退場してもらわなければならないだろう。
(編集部)
最終更新:2018.08.10 10:54