NHK幹部が現場に「森友をトップで扱うな」「昭恵夫人の映像を使うな」
会見のなかで弁護士の澤藤統一郎氏は、実務法律家としての立場から「大阪のNHK記者のことは、ひとりの問題ではない。多くの記者に萎縮を与えることになりはしないか」と警鐘を鳴らした。また、社会学者の瀬地山角・東京大学教授は、A記者とは大学の同級生であることを明かしたうえでこのように述べた。
「森友問題が多くの視聴者から関心を集め、かつ視聴者の目線で見たときに、解決にはほど遠い現状のもとで、数々のスクープを連発した敏腕の記者を現場から外すという判断をするということについては、メディアとしての見識を疑います」
他方、A記者の人事を「日刊ゲンダイ」が報じた直後から、安倍応援団のネット右翼や一部メディアの間では「これは騒ぐほどのものではない普通の人事」とするような話が流れている。
だが、そんなわけがないだろう。実際、前出とは別の放送関係者は「A記者には内示が出る前の段階で、周辺から陰に陽にプレッシャーをかけられていたと聞いています。本人も局内の上司に『取材をやめたくない』という気持ちを伝えていたようです」と語る。局外の友人も、A氏から「最後まで記者を続けたい」という言葉を直接聞いているという。
繰り返しになるが、実績も十分な記者を、本人の希望を完全に無視し、報道も取材もできない部署に異動させる。これはやはり、NHK上層部が安倍政権を忖度し、森友問題でこれ以上決定的なスクープを出させないよう、人事権を悪用して“幽閉”したとしか思えないものだ。
そもそもこの間、NHKは森友問題に関するスクープを複数報じた一方で、現場には幹部からの圧力がかけられていた。このことは国会でも取り上げられてきたとおりだ。
たとえば、NHKの2018年度予算審議がおこなわれた3月29日の参院総務委員会では、共産党の山下芳生議員が“NHK関係者からの内部告発文書”が届いたとして、その内容をこのように読み上げた。
「『ニュース7』『ニュースウオッチ9』『おはよう日本』などのニュース番組の編集責任者に対し、NHKの幹部が森友問題の伝え方を細かく指示している」
「トップニュースで伝えるな」
「トップでも仕方がないが、放送尺は3分半以内」
「昭恵さんの映像は使うな」
「トップで伝えるな」というだけではなく「トップでも仕方がないときは3分半以内」という細かい指示にはリアリティがあり、放送現場を知らない人間には簡単にでてくるものではない。