自衛官暴言を生んだのは“シビリアンコントロールの欠如”でなく、安倍政権への追従だ
翻って、幹部自衛官が小西氏に放った「国民の敵」という言葉は、つまるところ「非国民」の言い換えであり、その背景に、小西氏本人だけでなく野党を支持する有権者への強い嫌悪感が自然と見て取れる。ひっきょう、銃口を「敵」に向けるのが軍隊ならば、自衛官の暴言はまさに市民に銃を突きつけるも同然だろう。
繰り返すが、だからこそ、今回の事件を「シビリアンコントロールの欠如」と言うだけでは本質を見誤りかねないのだ。もとより自衛隊内に保守的な風潮があるのは言をまたないが、幹部自衛官による「お前は国民の敵だ」発言は、それがエスカレートして政治による統制が効かなくなったというよりも、人々を敵と味方に分断する安倍政治の空気が浸透し、政権に批判的な者は「敵」と見なすという、極めて短絡的かつ危険な兆候を示していると言える。
いささか逆説的だが、その意味において、自衛隊はむしろ政治の統制から逸脱しているのではなく、グロテスクなまでに安倍政権を追従しているのである。実際、そのことは防衛省トップの言葉からも浮き彫りになっている。小野寺五典防衛相は今回の事案について、「自衛隊員の服務の問題になるので事実関係を確認し、適正に対応したい」と述べているが、同時に「(自衛官も)国民の一人として当然思うことはあると思うが」などとフォローした。この言葉の軽さが何よりの証左だろう。
何度でも繰り返す。今回の事件は単なる暴言事案ではない。市民を敵と味方に分断して「国民の敵」を糾弾する発言が、他ならぬ実力組織である自衛隊から公然と発せられたのだ。「政権を批判する国民の敵に銃口を向けて何が悪い」。そういうメンタリティが、安倍政権下の自衛隊で確実に萌している。決して、うやむやにさせてはならない。
(編集部)
最終更新:2018.04.19 12:14