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ブラ弁は見た!ブラック企業トンデモ事件簿100 第11号 

あなたの会社の新人研修は大丈夫?“寝させない洗脳合宿”被害者が警鐘「ブラック企業に騙される可能性は誰にでもある」

「ブラック企業に騙される可能性は誰にでもある、本人の能力や人間性の問題じゃない」

 会社側の和解案が出たとき、彼は、和解を蹴って訴訟をするか、とても迷っていた。彼は、同じく長時間労働に耐えられず退職した元同期などにも、一緒に訴訟をしないかと声をかけたりもしたが、元同期からは、「会社辞めてから残業代請求するとか、そんなん詐欺やん。」と言われたそうである。もちろん、残業代請求は正当な権利行使であって、残業をさせながら残業代を支払わない「犯罪行為」を行ったのは、会社のほうである。「洗脳合宿」の呪縛は恐ろしい。

 新卒での就職でつまずいたとはいえ、彼はまだまだ若いのだから、新たなキャリアを目指すなら早いほうがいい。どちらがより正しいというものではなく、彼のそれからの人生を考えれば、彼が和解に応じた判断も、正しい判断だったと思う。彼はその後、和解解決金を元手に勉強し、現在労働基準監督官として働いている。

 今回この原稿を書く前に、彼に連絡して、この件を書くことの了解をもらったのだが、その際に彼から現時点での感想をもらっているので、以下紹介する。

「毎年新卒の採用の時期になると、この会社の採用サイトを見てしまう。毎年新たに学生が採用されていて、胸が痛む。企業が元気に継続していて、やるせない気持ちになる」
「ブラック企業に入社する人は、その人にも問題があると捉える人もいると感じるが、状況次第で誰でも騙される可能性はある。そうなってしまうことに、本人の能力や人間性は関係ないと思う」

 彼は、これだけ大変な思いをした後に労働基準監督官になった。今後も、酷い目に遭った労働者の気持ちが分かる監督官として、仕事をしていくだろうと思う。事件は終了しているので、今この会社がどのような労務管理を行っているのかを知ることはできないが、会社のほうも、彼の件を通じ、自社の労務管理が労基法に反する違法なやり方であったことを理解はしたと思う。そのようなやり方を改めていることを、切に願う。

【関連条文】

法定労働時間 労働基準法32条
残業代 労働基準法37条
残業代不払いに対する刑罰 労働基準法119条

(塩見卓也/市民共同法律事務所 http://www.shimin.biz )

********************

ブラック企業被害対策弁護団

http://black-taisaku-bengodan.jp

長時間労働、残業代不払い、パワハラなど違法行為で、労働者を苦しめるブラック企業。ブラック企業被害対策弁護団(通称ブラ弁)は、こうしたブラック企業による被害者を救済し、ブラック企業により働く者が遣い潰されることのない社会を目指し、ブラック企業の被害調査、対応策の研究、問題提起、被害者の法的権利実現に取り組んでいる。
この連載は、ブラック企業被害対策弁護団に所属する全国の弁護士が交代で執筆します。

最終更新:2018.07.03 11:07

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