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ブラ弁は見た!ブラック企業トンデモ事件簿100 第9号 

美容師のブラック労働が過酷すぎ!平日定休日に休むのが有休!? 週6日・朝9時〜夜8時まで働いても残業代ゼロ!?

公休と有給の違い、時間外労働の意味…労働基準法を知らない会社

 所定労働時間を超えなければ時間外労働ではないとすれば、ちょいと頭の回る経営者であれば、所定労働時間は月間744時間!と設定するだろう。24時間×31日間で744時間。これで時間外労働が発生する余地はないことになる。

 もちろん、そんなわけはない。だがしかし、このことをわかりやすく説明しようとすると大変迂遠になる。あまりに当たり前すぎて、明示した判例も見つけられない。私はこの準備書面の作成のために労働基準法に関する条文解説本を何冊も購入し、大変説得的な準備書面を作成した。と自負している。

 そのおかげか、第一審判決では、解雇無効については認められなかったが、時間外労働についてはこちら側の主張が全面的に容れられた。付加金の支払いも認められ、こちらが控訴する必要はないと依頼者も言ってくれた。

 しかし、会社は控訴した。曰く、「所定労働時間を超えた時間のみが時間外労働であるという被告の主張を容れない原審が誤りである!」。

 私ごときの準備書面では、会社は説得されてくれなかったらしい。とはいえ、控訴審裁判所も、第一審裁判所と同様、元代表者と代理人を説得し、第1回期日から和解協議が始まった。だったらなんで控訴するんだ……と私が思うくらいなので、依頼者が単なる金銭解決で納得するわけもない。そのため、金銭面では分割には応じるものの基本的に減額には応じず、会社が労働基準法制に違反していたことを認め、深く反省する旨の文言を挿入することを求め、会社がこれに応じたので、無事和解が成立となった。

 この件で私が教訓としたこととしては、労働基準法を知らない会社というのは、本当にあるのだ、ということである。知らないことにしていたり意地になったりしているのではなく本当に知らないとこうなるのだ。

 それと同時に、人間、何がきっかけで人生が変わるか分からないということである。これをきっかけに、この依頼者は、美容師ユニオンの結成を目標にした活動のほか、新聞の取材に応じるなど、労働問題に取り組む美容師となっている。

【関連条文】
公休と有休 労働基準法35条(1週間に1度公休) 39条(有給休暇) 
時間外労働とは 労働基準法32条(週40時間・1日8時間労働) 36条(時間外労働) 40条(特例)

(皆川洋美/きたあかり法律事務所 https://kitaakari-law.com

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ブラック企業被害対策弁護団
http://black-taisaku-bengodan.jp

長時間労働、残業代不払い、パワハラなど違法行為で、労働者を苦しめるブラック企業。ブラック企業被害対策弁護団(通称ブラ弁)は、こうしたブラック企業による被害者を救済し、ブラック企業により働く者が遣い潰されることのない社会を目指し、ブラック企業の被害調査、対応策の研究、問題提起、被害者の法的権利実現に取り組んでいる。
この連載は、ブラック企業被害対策弁護団に所属する全国の弁護士が交代で執筆します。

最終更新:2018.07.03 11:07

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