週6日、朝9時から夜8時まで働いても残業代ゼロ!? 時間外労働のあり得ない解釈
この尋問で明らかになった上記2点について解説をしてみることにする。
まずは有給休暇の取得について。元代表者は平日に休ませていればそれは全部有給休暇だと解釈していたようだ。美容師のお休みについて、読者の皆さんも振り返ってみてほしい。年中無休というところも多いが、その美容室がある北海道では毎週火曜日が定休日だという美容室が一般的である。一般民間会社だと、土日が公休というところも多いかもしれないが、労働基準法の基本形でいえば、週に1回あるいは4週間に4回が休日であればよく、これはカレンダーには縛られない。美容室が土日に開いていないと、土日が休みの一般民間会社のお客さんを取り逃してしまうから土日は開けて、いわゆる平日に公休を持ってきているのだろう。なお、今回の記事を書くにあたって、美容室の定休日について調べてみたところ、月曜日定休の地域と火曜日定休の地域があるとのことであった。いずれにしても、定休日には店を開けていないのだから、その日に有給休暇を取得させているから有休が残っていないなどというのは無茶苦茶な話である。
次に、時間外労働について。まず、本当に言わずもがなだが、時間外労働をさせるためには、労働基準法36条に定める労使協定をして、届け出をしなければならない。これがなければ刑事処分がありうる。これを、裁判官の面前で、さも当然のように話したのである。
時間外労働というのは、所定労働時間を超えた場合に所定時間外労働(割増なし賃金の支払いがなされる)、1日8時間を超え、あるいは週40時間を超えた場合に、法定時間外労働(0.25倍以上の割増賃金の支払いが追加でなされる)となる。つまり、所定労働時間を超えていようがいまいが、労働時間が1日8時間を超えあるいは週40時間を超えれば、残業代は文句なしに発生する。
げに恐ろしきは、時間外労働に対する会社と会社側代理人の無知である。「所定労働時間を超えた労働時間“だけ”が時間外労働時間である。」と言い張るのである。この主張が誤りであることについて、私は労働基準法の教科書みたいな準備書面を書く羽目になった。というのも、この尋問結果を踏まえての和解期日において、裁判官が元代表者と代理人を説得するために、「これ……きちんと説明する準備書面書いてくれませんか……」と、私に頼んできたのである。