「退職の自由」を違約金で制限するのは、戦前の遊郭の人身売買と同じだ!
Aさんの話を聞いて、会社側の弁護士に送り付けた文章がこれである。
拝啓 時下益々ご清祥の段、お慶び申し上げます。
当職は、貴職が原告代理人をしている東京簡易裁判所平成2●年(ハ)第●号●●補助金返還請求事件(以下「本件」という。)の被告●の代理人となったものです。
本件は、退職を条件としてペナルティを定めたものであり、退職の自由に対する不当な制限であるとともに、労働基準法16条に違反するものです。
●という古い歴史を有する著名な大企業のグループ企業に属する貴社がこのような刑罰法規に違反する行為を公然と行っていることは憤りに耐えません。
速やかに、請求を放棄するよう強く勧告いたします。2週間以内に請求の放棄等がされない場合には、刑事的な手続きはもちろんのこと、広く社会にことの是非を問うつもりですので、ご承知おき下さい。
なお、当職は昨年12月にも労働基準法16条違反で告訴と記者会見をし、報道されていますので、慎重に検討されるよう申し添えます。
我ながら、私の高い品性と丁寧で気弱な性格がにじみ出た文書ではあるが、会社は、速攻で訴えを取り下げてきたため、事件は終了となった。
最近、労働相談をしていてよく目にする相談が、退職を申し出ると、ミスによる損害などで会社が負担していた金額を請求するとか、研修の費用を返せなどと言って、退職を妨害するというものである。
退職の自由を違約金で制限するというのは、戦前の遊郭で契約という名目で罰金や借金の利息、営業費用の負担など様々な名目で借金漬けにして事実上人身売買が横行していたように、「人身の自由」侵害の温床といっていい行為である。