イノッチ、有働が「叩かれても黙らない」とタブーに抵抗を宣言
ときに政治的なテーマに踏み込むことも厭わなかった『あさイチ』だが、なかでも繰り返し特集してきたのが、「戦争」だ。
毎年のように8月には戦争に関する特集を放送してきたが、たとえば2016年の8月には、画面右上に大きく「戦争はイヤだ」というテロップを出し、憲法9条の改正が議論にあがるなかで現代の戦争を考えよう、という特集を放送した。戦渦から日本に逃れてきた外国人に話を聴くという趣旨だったが、それは日本の現状に警鐘を鳴らす内容でもあった。
井ノ原は、「きょうは何を話すべきかってことなんですよね、ぼくらが」と力強く語り、現在の日本のなかで感じる危機感をこのように口にした。
「いつ(戦争は)起きてもおかしくないっていうのを、もうちょっとリアルに想像できるかなって」
「たとえば日本でひとつの流行が起こったときに、誰が止められるかっていえば、誰も止められないじゃないですか」
「(大きい流れに)なっちゃったら誰にも止められない、治まるのを待つしかない」
先の戦争がそうだったように、戦争への熱狂が扇動されれば、終わるまでは誰にも止められなくなってしまう。しかも、いまの日本では「積極的平和主義」という言葉のもとに武力攻撃を正当化している。そんななかで井ノ原は、戦争はすぐ身近なところにあり、大きな流れに乗ってしまうことの恐ろしさを訴えたのだ。
さらに、この日の『あさイチ』では、「銃を持って戦うことだけが戦争ではない。言いたいことを言えないことも戦争」と語るミャンマー人の女性のVTRを受けて、出演者たちが自分の眼の前でいま、起きている「メディアの萎縮」についても語り始めた。
口火を開いたのは柳澤秀夫氏だった。
「メディアで伝える立場にあるぼくらの仕事っていうのは一体何なのかなって、やっぱり考えなきゃいけない」
「右から左にきたものをそのまんま『こうですよ』って垂れ流すのは、ぼくらの仕事を果たしていないと思う」
続いて、井ノ原が「(政治の話題が)若干タブーな感じ」と切り込み、ゲストのマキタスポーツも、「そうこうしているうちに、タブーがどんどんどんどん拡張していって広まっていくうちに、大事なことが進んでいっちゃってるような気もしますよね」と指摘した。
また、有働アナも、“空気を読んで自分の言いたいことを封印することで、大きな空気に加担してしまうのが怖い”と感想を述べたのだが、ここで井ノ原は有働に「有働さんみたいな人、ぼくもそうだけど、バーって喋る人は、喋ったらいいと思うんですよね」と語りかけた。すると有働は「叩かれてもね」と返答し、井ノ原も「叩かれてもいい」と胸を張ったのだった。