学校生活、職探し、恋愛……、アントニーが語るアフリカ系ハーフの苦労
そういった差別をめぐる問題は、たとえば、職を探すときなどに表面化する。お笑いコンビ・マテンロウのアントニー(本名・堀田世紀アントニー)は、アフリカ系アメリカ人の父と日本人の母との間に生まれたハーフだが、「女性自身」(光文社)2014年4月15日号に掲載された、植野行雄(デニス)と春香クリスティーンとのハーフ芸能人座談会のなかでこのように語っていた。
「ハーフって名前で驚かれるよね。アルバイト応募の電話をかけて「堀田世紀です」って、流ちょうな日本語で言っても、相手は何も感じない。ところが、いざ面接に行くと、キョトンとされるの。しかも、受からない!」
アントニーといえば、「中学生のとき英検5級に落ちたことが学級新聞の1面になって号外まで配られた」などの「ハーフあるある」を面白おかしく語る芸風で知られるが、この英検をめぐる鉄板ネタも、そもそも一般の生徒なら英検5級に落ちただけのことでそんな騒ぎにはならないし、芸人らしく笑いにつながるように語ってはいるがこれ自体がひどい差別被害エピソードである。
また、アントニーは同座談会のなかで、恋愛をめぐる話もこのように語っている。
「もし僕らが英語を話せたら、恋愛の可能性も無限に広がってたと思わない? この小さな島国で生まれ育って、日本人と恋愛しようとしても、相思相愛になる確率ってとんでもなく低い」
ここでアントニーは「恋愛」とだけ言っているが、この発言の言外に、結婚しようとした際に婚約者の親族との間に生じる軋轢やそもそも外国人(のように見える外見)を恋愛対象から除外する日本人の差別意識をにおわせていることは間違いないだろう。
こういった事情があるのにも関わらず、なお「日本には黒人差別はない」などと言えるだろうか。
今回の『笑ってはいけない』は、全国放送される大晦日の目玉番組で差別につながる表現が無自覚に垂れ流しにされたから海外をも巻き込んだ大炎上となったわけだが、残念なことにこういった差別表現がメディアを通して広く発信されることは日常茶飯事で起きていることである。