首相官邸HPより
アメリカのトランプ大統領が6日(日本時間7日)、エルサレムをイスラエルの首都と「認定」し、アメリカ大使館をテルアビブから移転すると宣言したことで、世界に激震が走っている。
言うまでもなく、エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教それぞれが聖地とする都市だ。1947年の国連決議によって国連管理下の国際都市とするよう定められたが、イスラエル側は1950年に首都と宣言。他方、占領下にあるパレスチナ側も将来的な独立後の首都にするとしており、エルサレムの帰属問題は中東情勢の長年かつ最大のリスクファクターとなっている。
トランプが宣言を実行に移せば、中東の和平交渉が水泡に帰し、国際情勢のバランスが大きく崩れるのは必至。最悪の場合、「第五次中東戦争」勃発もありうる。事実、パレスチナのアッバス議長は「過激派組織が仕掛ける宗教戦争を助長し、地域全体に損害を及ぼす。重大な局面を経て、終わりのない戦争へと我々を導くだろう」と警告。7日には、パレスチナ側の抗議活動が広がるなかで、パレスチナ自治区であるガザ地区からイスラエル領に向けてロケット弾が発射され、イスラエル軍がイスラム原理主義組織ハマスの関連施設へ報復攻撃するなど、すでに武力衝突が起きている。
当然、イスラム諸国だけでなく、アメリカの同盟国を含む国際社会全体から極めて強い批判が殺到している。報じられているように、各国首脳は首都認定の拒絶とトランプへの批判を次々と公にした。
「米国の決定には賛成できない」「イスラエルとパレスチナの交渉によって決められるべきだ」(イギリス・メイ首相)
「トランプ政権のエルサレムについての立場を支持しない。エルサレムの地位は、イスラエルとパレスチナの二国共存に向けた交渉の一環として解決されるべきだ」(ドイツ・メルケル首相)
「遺憾で受け入れられず、国際法や国連安全保障理事会の決議に違反する決断だ」(フランス・マクロン大統領)
また、フランシスコ・ローマ法王もバチカンでの演説で、「この数日間の状況に対する強い懸念」を示し、「エルサレムの現状を尊重すべきだ」と呼びかけた。国連のグテーレス事務総長も声明で「いかなる一方的な措置も中東和平の見通しを危うくする」と表明。いずれも、エルサレム問題について立場を明らかにし、トランプの宣言に対する懸念や批判を前面にするものだ。
ところが、そうしたなかで事実上の“沈黙”を続けているのが、日本の安倍政権なのである。「いったい何を考えているのか」と言わざるを得ない。