お金目当てでLGBTフレンドリーを装うビジネスを一蹴
この特集は、日本におけるLGBT市場の経済規模が6兆6000億円という“新たなマーケット”として注目したもの。だが、特集の最後にインタビューで登場したマツコは、そうしたLGBTの商売利用について、じつに真っ当かつ厳しい見方を示したのだ。
「今になって、ゲイでも何でも、物を買ってくれればよしとするのは、不景気が続いて、背に腹は代えられなくなったからではないか。そんな商売のやり方をしているから、日本企業は世界では勝てない」
「(LGBTに)フレンドリーな企業といっても、ゲイやレズビアンが何かイベントを実施するときに、単発的に協賛につく程度のことしかしていない。おカネを「好きに使っていい」という会社はまだ志が高いと思うが、単に物品協賛だけだと、それで済ますのかと思ってしまう」
商機になるという理由だけでLGBTフレンドリーを装うビジネス界を一蹴するマツコ。さらに「社会に対して望むものは何か」と問われると、マツコはこうはっきり語る。
「必要なのは法整備。特別なことをするのは逆差別につながるが、基本的人権は与えられるべきだ。
たとえば、配偶者でないパートナーに財産を残したくても、今は養子縁組をしないと残せない。公的機関が認めた存在でなければ不具合も生じることに対しては、法整備が必要だと思う」
だが、マツコは現在と同様に「存在を意識してください、世の中を変えてくださいと、声高に主張するつもりはない」「一くくりにできるほど一色ではない」と自身の考えを示す。
マツコにとって「マイノリティとして生きること」はどういった意味をもっているのか。そのことに迫ったのが、2013年6月に放送された『ハートネットTV』(NHK Eテレ)のシリーズ「多様な“性”と生きている」に出演したときのインタビューだ。
すでに当時から多くのレギュラー番組を抱えていたマツコにとって、雑誌とは違い、テレビで自分のセクシュアリティについて「真面目に」語るのは初めてのこと。この背景には、マツコが「ジャニス・ジョプリン、森英恵、土井たか子、伊藤みどり」と並んで尊敬しているという元NHKアナウンサー・加賀美幸子が聞き手を務めたという点も大きかったのだろう。