安倍首相自ら加計学園の新学部を発案していたとの証言も
質問は「12年も加計ありきで動いていたのに、ほんとうに知らなかったの?」というものであって、加戸氏が閉会中審査で語った「獣医学部誘致の経緯」とは何も関係がない。なぜ加戸証言の話になるのかさっぱり意味がわからないが、ここで富川キャスターが「それも伝えたんですが」と言うと、安倍首相はムキになって「それは伝えていないと思います。伝えていないと思いますよ」と繰り返したのだ。
しかし、これも安倍首相の嘘だ。『報ステ』は7月24日に、同日おこなわれた閉会中審査で加戸氏が今治市での獣医学部誘致の経緯についての証言や、「私は鳥インフルエンザに巡りあいまして、愛媛に獣医学部が欲しいと思いました。ちょうど県会議員と加計学園事務局長がたまたまお友だちという関係でつながった話でできあがりましたから、飛びつきました」などの証言をしっかり映像で紹介している。「伝えていない」というのは事実と異なるのだ。
だいたい、今治市と加計学園が獣医学部新設のために動いてきたその12年間のあいだ、安倍首相と加計孝太郎理事長はしょっちゅうゴルフだの会食だのバーベキューだのを繰り返してきた。また、安倍首相は加計学園グループの千葉科学大学の開学10周年を記念する式典に出席するためにわざわざ銚子まで駆け付け、祝辞を述べている。2009年の総選挙では、加計学園が安倍氏の選挙に動員すべく職員に出張命令まで出していた。くわえて、加計理事長は「自由民主党岡山県自治振興支部」の代表者として政治資金収支報告書に名を連ね、同支部の所在地も加計学園グループの予備校である英数学館岡山校の住所が記載されている。
さらに千葉科学大には、萩生田光一幹事長代行をはじめ、木曽功・前内閣参与や、井上義行・元首相秘書官、江島潔・元下関市市長といった「安倍人脈」が大量に流れ込んでいる。こうした背景について、同大の元教員は「文藝春秋」(2017年8月号)の取材に対し、同大の危機管理学部は〈安倍の発案で設置された〉と証言。しかも、この元教員自体が「安倍さんから、『教授として名前だけ貸してくれないか』と頼まれました」とも述べている。
どうだろう。たんなる友だちという域を超えて、安倍首相は加計理事長の学校運営に関与し、一方の加計理事長も安倍首相の政治活動をバックアップしてきた。そうした深い関係を築いていながら「獣医学部新設の話は知らなかった」というのは、あまりにも無理がありすぎる。そのことをずっと安倍首相は問われているのに、「誰ひとり私の指示を受けたとは言っていない」「加戸証言をメディアは報じない」しか言わないのだ。これを「丁寧な説明」と呼べるわけがない。
森友・加計問題について安倍首相があまりに同じことを繰り返すばかりに、ウンザリしている人も多いだろう。「もう、この話を聞くのはたくさん」と思っている人も多いはずだ。だが、この疑惑は、安倍首相の肥大化した権力を裏付ける重要な問題だ。「妻が騙された」のではない。いま、この男こそがわたしたちを選挙戦において「騙そう」としているのである。
(編集部)
最終更新:2017.10.12 12:13