AVに飛び込んだのは自分が被害にあった理由を探すためだった
その後は、事件を機に植え付けられてしまった男性不信のせいで初恋の相手とのセックスでもフラッシュバックを起こしてしまったり、また、男性がもつ性的欲求への恐怖心やトラウマから、逆に奔放な性生活を送ったりなど、かなり荒れた青春を送ることになる。
そして、転校した単位制高校を卒業した後に選ぶことになるのがAV女優という職業だった。レイプ被害に遭った彼女がなぜそういった職業を選ぶことを決めたのか。そこには大きく二つの理由があった。
〈私は自分の心の傷と同じような傷を持った仲間を求め始めていた。そして、ふと、AV業界には、私と似た経験をしている女性が多いと何かで読んだ事を思い出した。
そこに行けば仲間がいるのかな? どんな生活をしているのかな? AV業界ってどんなところだろう……そこは、ダークなイメージだ。社会の底辺? 汚い業界? 欲だらけの世界? 本当にそうなのかな?
どんな大人がいるんだろう。どんな子がいて、どんな理由を持っているんだろう。私はそこで何が見れるんだろう〉
そしてもうひとつが、なぜ自分は性犯罪の被害に遭うのかという理由探しだ。実は、彼女が性犯罪の被害にあったのは15歳のレイプ事件がはじめてではない。小学校4年生のときには自宅マンションのエレベーター内で見知らぬ男に胸を触られ、ちょうどその頃から痴漢の被害にも遭い始めた。また、公園で遊んでいると、20歳ぐらいの男から頭にガムをつけられるというイタズラも受けていたという。彼女はその理由を探そうとした。
〈それに、私は私の理由を知りたい。どうして、こんなに性犯罪の被害にあう? どうして、子どもの頃からそうなの? 私の外見が性的興奮を抱かせるのだろうか。それなら、もうそうだって決め付けてしまいたい。
あの業界に行って、売れよう。そしたら、諦めがつく。だから、しょうがなかったんじゃないかってそう思ってしまったほうが、いっそ、納得がいく。
私は、性という欲が怖い。性が怖いなら、そこに私を投げてしまえ。荒療治って言うけど、きっとそれだ〉