稲田防衛相の虚偽答弁によって忖度が働いた可能性
稲田氏が明確に日報データの存在を認識し、隠蔽に関与していたことはもはや決定的といっていいだろう。なお、メモに出てくる「後藤くん」とは、日報問題をめぐる国会で厳しく稲田防衛相を追及していた民進党の後藤祐一議員のことで、稲田氏が頭を抱えている様子がありありと伝わってくる。
いや、問題は稲田防衛相がたんに隠蔽を了承していたというだけではない。自衛隊日報にはもっと深い背景がある。たとえば、発売中の「週刊文春」(文藝春秋)が載せた“防衛官僚覆面座談会”では、防衛省の中堅官僚Bが一連のリークを“陸自による防衛相への反乱”とする見方について、こう語っている。
「反乱説はどうかなぁ。日報を『ない』としたミスを目立たなくするために、陸自が組織防衛に走った可能性もある」
そして、続けて中堅官僚Cがこう述べているのだ。
「『陸自で破棄されていた報告を受けている』と大臣が国会答弁しちゃった手前、辻褄を合わせるために“統幕で日報が見つかった”ことにした。ところが、防衛監察で陸自だけが悪者にされる可能性が浮上して、慌ててリークが始まった、と」
ようするに、自衛隊制服組が稲田氏ら政府側の答弁に振り回されるかたちで、組織的隠蔽をめぐって嘘を積み重ねることになったということだろう。
実際、本サイトでも指摘しているとおり、そもそもこの日報隠蔽問題の背景には、日報にも記されていた昨年7月のジュバでの「戦闘」が、安保法に基づく自衛隊駆け付け警護の新任務付与にとって“不都合な事実”だったという事情がある。稲田防衛相と安倍首相は、国会で「戦闘」を「衝突」と言い換えて、新任務付与を閣議決定。その11月には、強引に駆け付け警護の任務を付与した自衛隊部隊を現地に派遣した。
だからこそ、この日報隠蔽問題は、政権を忖度した防衛省が「戦闘」をなかったことにするため、日報の隠蔽を働いた可能性が濃厚なのである。それどころか、官邸、安倍首相が防衛幹部に指示をした可能性すらあるのだ。