指原莉乃と文化人・教養人との相性の悪さ
また、「お酒を飲んだ状態で原稿を書けるか?」というトークテーマでは、「酔った状態では書けない」派のリリーが「俺、昔、山田風太郎さんと中島らもさんが対談で『やっぱ、酒飲んだら書けないね』って言ってるの見たとき、この二大酔っ払いが言ってるなら間違いねえなって」とトリビアを披露し、店内は笑いに包まれたが、指原だけはやはり意味がわからないようで、キョトンとしていたのだ。
その後、リリーに原稿料についての生々しい質問をしたり、編集長などの役職についている人たちに、「絶対偉いと思ってたもん、会ったときから」などと大げさなお世辞を飛ばし、笑いをとってはいたものの、やはり“場違い感”は否めないものだった。
だが指原といえば、これまでも出版関係者に対しても歯に衣着せぬ物言いをしてきたはずだ。たとえば光文社でAKBまわりの仕事を担当してきた元「FLASH」編集長の青木宏行氏へのつっこみや、白石麻衣の写真集『パスポート』や『AKB48総選挙公式ガイドブック』シリーズなどを担当する講談社の谷口晴紀氏に対しても、先月19日深夜に配信されたネット番組『AKB48のオールナイトニッポン超直前スペシャル!』(SHOWROOM)のなかで、「総選挙(ガイドブックのグラビア)で色んなメンバーを脱がしてる」「売れる本しか出さない谷やんです」とからかい、笑いを生んでいたほど。
しかし、グラビアや芸能関係の編集者とはできるこうしたやり取りも、『真夜中』での文化人や文壇関係の編集者とでは、あまりに勝手が違った。ここで浮き彫りになったのが指原と教養人的なジャンルの人たちとの食い合わせの悪さだった。
とはいえ、指原と文壇関係者の“乖離”こそ現在の出版界、そして小説界の現状を如実に表している。現在の出版界では、又吉の二匹目のどじょうを狙うべく、芸能人に小説を書かせようとする動きが後を絶たない。文学的教養などよりも、商売と話題優先というやつだ。
もちろん、芸能人だから小説が書けないなどと断じるつもりはない。加藤シゲアキ(NEWS)や押切もえのように高い評価を得る者も、なかにはいるだろう。だが、そのほとんどは名前だけが売り物のあだ花であり、そうした芸能人、著名人に頼るしかないのが、現在の文壇、そして出版界の一面でもある。
そうした動きは、もちろん今後も続いていくだろう。かつて幻冬舎に依頼された小説は頓挫した指原だが、「もし指原が小説を連載するなら原稿料はいくら払うか?」という質問に、「週刊ポスト」編集長はペラ1枚で3万円の原稿料を出すと宣言し、その金額の高さにリリーは驚愕していた。文学的な教養など前時代の遺物だったことが浮き彫りになった一夜であった。
(新田 樹)
最終更新:2017.12.01 05:50