じつはこうした今村復興相の酷薄な姿勢に対し、きょう開かれた参院東日本大震災復興特別委員会において、川田龍平参院議員が自身の経験を語りながら、自主避難者への対策を訴えた。
川田議員といえば、生後間もなく血友病であることがわかり、治療で使われた非加熱の血液製剤によってHIVウイルスに感染。東京HIV訴訟の原告となり、19歳で実名を公表し注目を集めるなかで国と裁判で闘った経験がある。議員としても、「子ども・被災者支援法」の作成にかかわり、同法案が安倍政権によって骨抜きにされていることに異議を唱えてきた人物だ。
きょうの復興特別委で川田議員は、こう語った。
「『裁判をするならすればいい』という大臣の発言に胸が痛んだ。自分が薬害エイズの裁判を経験して(思うのは)、被害者や被災者の人たちが自ら裁判をすることはすごく大変なんです。自分が裁判をやることで両親は離婚しました。経済的にも大変でした。経済的にも精神的にも裁判をやることは大変です。そう簡単に弁護士さんも見つかりません。裁判をやることはそう簡単なことじゃないんです」
「私は、被災者の人たちが、裁判をやらなくてもしっかりとした救済や補償を受けられるようにすることが必要だと考え、『子ども・被災者支援法』を前もってつくったわけです。私は裁判にならなくても被害を受けた人たちが当たり前の権利として補償・救済されるのが『子ども・被災者支援法』だと思っています」
川田議員の言うことはもっともだ。以前、本サイトでも紹介したが、『ルポ 母子避難――消されゆく原発事故被害者』(吉田千亜/岩波新書)には、“自主避難は自己責任”という風潮が政府、行政に蔓延していることから、自主避難する人びとが避難費用の自己負担によって生活が圧迫されている現実、さらには仕事のために夫だけが福島に残り、妻と子どもが避難するという二重生活によって夫婦関係が破綻してしまったケース、あるいは避難をめぐり家族内で意見が分かれ一家離散となってしまったケースなどが描かれている。原発事故によって多くの人びとがこれまでの生活を奪われ、家族さえも崩壊させられてしまったのだ。
そうした現実を顧みることなく、今村復興相は“文句があるなら裁判でも何でもすればいいだろ”と啖呵を切った──。この言葉は、まさに自主避難者に向けられた国からの「暴力」と言っていいだろう。
そもそも、4日の「暴言」でこの男が辞任に追い詰められることなく、いまもぬくぬくと復興大臣の座に就いていることが異常なのだが、もはや自主避難をする人びとを傷つけたという反省が微塵もないきょうの態度を看過することはできない。即刻、辞任すべきである。
(編集部)
最終更新:2017.12.01 12:25