実際、安倍首相はこの後、加計学園の獣医学部新設のために露骨と言ってもいいくらいの動きをしている。2015年12月には、今治市を全国10番目の国家戦略特区にすると決め、16年11月には獣医学部の新設に向けた制度見直しを表明。そして、以前から獣医師学部新設の規制緩和を訴え、安倍首相が「教育再生実行会議」の有識者メンバーに抜擢したこともある前愛媛県知事・加戸守行氏を国家戦略特区会議の今治市分科会委員に任命しているのだ。まさに「後ろ盾」という表現がぴったりの利益誘導としか言いようがない。
さらに、森氏のレポートは、安倍首相側近閣僚(当時)の関与についても指摘している。
〈当日の午後、加計たちはその足で文科大臣(当時)の下村博文のもとを訪ねている。元来、文科省には、医師、歯科医師、獣医師、船舶職員の四職種について新たな学部の新設や増設を認めないという告示が存在してきたが、やがてその告示が見直された〉
下村元文科相といえば安倍首相の“お友だち閣僚の筆頭”と呼ばれていたほどだが、夫人である今日子氏は加計グループである「英数学館小学校」(広島県福山市)の説明会パンフレットに安倍昭恵夫人とともに挨拶文を寄せていたことがすでに判明している。また、同レポートでも、安倍首相夫妻の訪米には加計氏と今日子夫人が同行していたことを伝えている。
安倍首相本人だけではなく、安倍首相の人脈である下村夫妻の関与も疑われる、この加計学園問題。いや、加計学園疑惑を追うと、安倍首相の人脈が多々浮かび上がってくる。現に、加計学園の理事と同学園の運営する千葉科学大学学長に就いている木曽功氏は、一時、第二次安倍内閣の内閣官房参与を務めていた元文部科学官僚。安倍首相がゴリ押しした「明治日本の産業革命遺産」のユネスコ世界遺産登録にも携わった人物だ。また、安倍首相は昨年、加計学園の監事だった木澤克之氏を最高裁判事に任命するなど異例の人事まで行っているのだ。
さらに、加計学園は2004年に前出の千葉科学大学を千葉県銚子市に開校したが、同大設置の際には、安倍首相が実際に加計氏のために動いていたという情報もある。森氏のレポートでは、安倍・加計氏と旧知の大学関係者がこう証言している。
「大学は都心から電車で二時間くらいかかるし、教員のなり手がない。それで安倍さんがいろんな人に声をかけていました。安倍さんの口利きで一年間だけ教授になってもらった人もいるほどです」
「なにより、キャンパスの用地取得を巡って、地元と揉めたんです。それで、安倍さんは『俺があいだに入ってあげて何とかなったんだよ』と自慢していたことがありました」