米山隆一・新潟県知事
1月5日の東京電力トップとの初面談で「(原発再稼動の議論開始の前提条件である)福島原発事故の検証に数年間はかかる」と明言し、柏崎刈羽原発再稼動を阻む“防波堤役”としての存在感を示し始めた米山隆一・新潟県知事が新たな試みをスタートさせた。2月8日、県政記者クラブ以外の記者も参加可能な知事会見「メディア懇談会」を初めて開いたのだ。
「さまざまな形で新しいメディアを通じ発信する」(米山氏)のが狙いだが、これも県知事選で訴えた「泉田(裕彦)県政継承」の一つといえる。同様の会見が2013年9月と10月に開かれていたからだ。
米山知事が冒頭の主旨説明後、記者はまず、原発テロ対策が不十分ではないかという問題について質問し、これに米山知事がこう答えた。
「事実としては仰るとおりだと思います。私も(柏崎刈羽原発に)行ってきましたが、相当程度の方々が突っ込んできたら、どうにもならないと思います。原発は、襲われていろいろなことがテロリストの思いどおりになった場合に、極めて大きなリスクを出す機関ですから、非常にその対策というのは必要なのだと思います」
いきなり原発テロ対策について聞いたのは、他でもない。前回のメディア懇談会で泉田知事(当時)が安倍政権や原子力規制委員会がすぐに取り組むべき課題として問題提起していたからだ。
2013年9月、原子力ムラの内部事情をよく知る現役霞ヶ関官僚が書いた小説『原発ホワイトアウト』(講談社)がベストセラーになり、このなかに泉田知事がモデルとされる伊豆田知事が登場。電力業界など原子力ムラの画策で伊豆田知事が逮捕されて失脚した直後、原発テロが起きてメルトダウンに至る結末となっていた。当然、出版翌月(10月)のメディア懇談会では原発テロに関する質問が相次ぐことになった。
これに対して原子力防災の専門家として泉田知事は、欧米など世界の潮流は「メルトダウン事故は起きる」という前提で対応を考えているのに対し、日本はそうなっていないと批判。原発テロについて警告を発していた。
しかし現在でも、泉田前知事が問題提起した原発テロ対策は不十分なままだ。