『テレビじゃ言えない』(小学館新書)
シリーズ完結となる『アウトレイジ最終章』が今年公開される予定の北野武。映画監督としてはバイオレンス満載の過激な表現で鳴らすが、「芸人・ビートたけし」としては、最近、イライラがたまっているらしい。
「このところ昔みたいに自由が利かなくなってる」
「テレビの自主規制が年々ひどくなっていて、かつてのような言いたい放題、やりたい放題がドンドンできなくなってきてるんだ」
たけしがこうぼやいているのは、先日発売された著書『テレビじゃ言えない』(小学館新書)でのこと。たけしにとって主戦場たるテレビ界の自主規制によって、過激な発言や毒舌を吐いてもカットされたり話を変えられてしまう……そんななか、社会事象を「毒全開でぶった切る」(帯より)のが同書の目的だという。
そして、同書においてたけしが最初に俎上に載せるのが、“テレビでは言えない”という「一億総活躍社会」なる安倍政権のスローガンの問題だ。
「現代のニッポン人を見ていて怖いのは、「世の中を疑う」って気持ちがまるでなくなってしまっていることだ。それは「一億総活躍社会」って怪しい言葉を、みんなが信じられないほどすんなり受け入れちまってるのに象徴されていると思う」
そう明言すると、たけしはこのスローガンをこんなふうにぶった斬るのだ。
「とにかく最悪のキャッチコピーなのは間違いない。もう、「一億玉砕」とか「一億火の玉」みたいな、戦時中の危なっかしい国威発揚のスローガンとほとんど同じに見えちまう」
「こんなスローガン、「軍国主義を日本中・世界中に思い起こさせたい!」と、あえて狙ってやってるのかと思うぐらいだよ。せっかくならサラッと「一億総活躍」ってだけじゃなくて、「一億総活躍・欲しがりません勝つまでは」ってコピーにしたほうが、狙いがわかりやすかったんじゃないの(笑)」