【圧力&自主規制その2】
高市総務相が「電波停止」発言で本音むき出し! 池上彰は痛烈批判するもNHKは…
キャスターたちの同時降板問題と同時期に国会で飛び出したのが、放送事業を管轄する総務省の大臣・高市早苗による「電波停止」発言だ。この「国の命令で電波を止めることもありうる」というトンデモ発言には、さすがにジャーナリストたちが続々と反論。そのひとり、池上彰は朝日新聞の連載コラムで〈国が放送局に電波停止を命じることができる。まるで中国政府がやるようなことを平然と言ってのける大臣がいる。驚くべきことです。欧米の民主主義国なら、政権がひっくり返ってしまいかねない発言です〉と痛烈批判するほどだった。
さらに2月29日には田原総一朗を筆頭にテレビで活躍するジャーナリストたち6名が、高市「電波停止」発言を批判する共同声明を発表。外国特派員協会で記者会見を行った。会見では複数テレビ局関係者たちの〈気付けば、街録で政権と同じ考えを話してくれる人を、何時間でもかけて探しまくって放送している。気付けば、政権批判の強い評論家を出演させなくなっている〉など、生々しい現場の実態も代読された。
ところが、この会見の模様を報じたのはごく一握りの民放番組だけ。NHKにいたっては会見の取材にすら行かない有様だった。なお、NHKは今年で籾井勝人会長の任期が終わり、上田良一氏体制に移行するが、その状況はまったくかわらないともいわれている。実際、年明けの副会長人事には官邸の代理人となる“実務屋”を据えると目されており、官邸とNHKの今後の動きを注視し続けるべきだろう。
【圧力&自主規制その3】
参院選で自民党が“違法”政党CMゴリ押し、弁護士連れて局に乗り込み!
安倍政権に批判的なキャスターを一斉に“パージ”したテレビ局。では、それによって官邸からの圧力が軽減されたかといえば、実際には逆だった。むしろ、“言論”という武器を奪われたことで、露骨な介入事件が勃発。そのひとつが、夏の参院選での“自民党オバマCM強要事件”だった。
これは民放局の政党CMをめぐって、公職選挙法の規定から難色を示す局側に対し、自民党が弁護士をつれてゴリ押しを仕掛けたというもの。当初、自民党が代理店を通して出してきたCMには、5月の広島訪問時のオバマ米大統領と安倍首相のツーショット写真が挿入されていた。しかし、そもそも公選法において政党CMは「選挙運動が目的でない政党の日常の政治活動」の広告でなくてはならず、オバマの広島訪問は明らかに日本政府の外交の中で実現したことであり、自民党の活動ではない。当然、こんな違法の疑いの高いシロモノを垂れ流すと放送局は罰則を受けるが、さらに政党CMの随所に登場する“経済実績”を喧伝する数字も、各局で「数字が恣意的で、客観的ではない」という指摘の声があがり、一度は自民党側に「このままでは放映できない」と突き返したという。
ところが、自民党は修正案でもオバマと安倍首相のツーショット写真を譲らず、各局の営業部に代理店が毎日のようにやってきて、CMを放映するように圧力をかけ始めた。さらに一部民放には弁護士まで送り込み、恫喝をはじめたのだ。最終的に、本サイトがこの圧力問題を報じた直後、自民党は一転して各局から“オバマCM”案を引き下げてしまったというが、経済実績の誇大広告的数字はそのまま。さるキー局関係者によると、政党CMをめぐってここまで露骨に圧力をかけられたことは、これまでなかったという。官邸&自民党はいまや完全にテレビ局をなめきっているといっていいだろう。