上・NHK公式サイト「会長あいさつ」より/下・TBS『NEWS23』旧番組サイトより
「72位」──なんの数字かお分かりだろうか。今年4月、国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」が発表した、2016年度の「世界報道の自由度ランキング」における日本の順位で、東アジアでは香港や韓国よりも低くなっている。
第二次安倍政権の誕生以降、どんどん激しさを増している官邸、自民党やその応援団によるメディアへの圧力。今年はそれが完遂し、もはやテレビをはじめとするマスコミは圧力なんて加えなくたった、勝手に萎縮、政権の意向を忖度した自主規制をしてくれるようになった。個別の事案をひとつひとつあげていけば、それこそ除夜の鐘がとっくになり終えて初日の出を迎えそうなので、今回はとくに象徴的な7つのトピックスを選んでみた。では、さっそくリテラが振り返る2016年「報道への圧力事件簿」をお伝えしていこう。
【圧力&自主規制その1】
国谷、岸井、古舘が降板して番組が骨抜きに! 政権批判弱まり首相にも追及できず
やはり、2016年をもっとも象徴するのは、政権に批判的なテレビキャスターたちの降板劇だろう。言うまでもなく、NHK『クローズアップ現代』の国谷裕子、TBS『NEWS23』の岸井成格、そしてテレビ朝日『報道ステーション』の古舘伊知郎のことである。本サイトが昨年から報じ続けてきたように、彼らは官邸から陰に陽に圧力を受け続けてきた。そして、今年の春をもって、いっせいに番組を追われることになったのだ。
もっとも、国谷氏も岸井氏も古舘氏も、最後の番組出演時の挨拶では、明確に「官邸からの圧力」を公言することはなかった。しかし、のちに国谷氏は『世界』(岩波書店)のなかで、官邸を激怒させた“菅官房長官インタビュー事件”を振り返りながら、〈人気の高い人物に対して切り込んだインタビューを行なうと視聴者の方々から想像以上の強い反発が寄せられるという事実〉について語り、これらを「風圧」と表現。また岸井氏も、番組降板後に発売された「週刊文春」(文藝春秋)での阿川佐和子との対談のなかで、官邸の「ディープスロート」から「『この人が岸井さんの発言に怒ってますよ』という情報が、逐一私に入ってたから、よっぽど、気に入らないんだろうなとは前から知っていました」と語っているように、実際、官邸はTBSの幹部に“岸井は気に食わない”と様々なかたちで伝えていた。その結果、番組降板に結びついたのであり、それは“古賀茂明「I am not ABE」事件”をめぐる『報ステ』及び古舘氏のケースも同様だった。
はたして、彼らが去り“リニューアル”した各番組はどうなっただろうか。ご存知の通り、まさに「両論を併記していますよ」と言わんばかりのVTRやコメンテーターの解説が幅を利かせるようになり、さらに、参院選前の党首討論や日露首脳会談後の安倍首相の生出演時も、新キャスターたちが痛烈な質問をぶつける場面は皆無。ほとんど“政権との馴れ合い”の様相を呈している。その意味でも、3名のキャスター降板劇は、まんまと官邸の思惑どおりの結果になったと言えるだろう。