被災地や原発、貧困などを棚に上げて、ワイドショーはオリンピックにかまけている。そうした姿勢を長渕は批判していたのだ。長渕は昨年、『ワイドナショー』(フジテレビ)に出演した際、安保法制に対してこう言っていた。
「僕らが議論すべきなのは、どの時代でも、いま10代になろうとしている、未来と称される、僕たちの自国の子どもたちが銃を持って撃っていくんです。そして、その犠牲がどんどんどんどん出ていくんですよ」
さらに、長渕は果敢に安倍首相に強烈なダメ出しまでした。
「戦後復興後、高らかに我々は生きてきましたけど、そのなかに負の遺産はありました。負の遺産を残しておきながら、そのことにきちっとケリもつけないくせに、次のことをやっていこうとする俺らの大将、ちょっと違うんじゃない?」
このまま戦争をできる国にしていいのか。安倍首相のやっていることは間違っているんじゃないのか──。まさに長渕がワイドショーに出演して言明したこと、こうした話を、視聴者を騙すようにマスコミは覆い隠していないか。それこそが、長渕が歌詞に込めたメッセージだったはずだ。
にもかかわらず、本日の『バイキング』では、東国原英夫が「長渕さんが言いたかったのは、おそらく情報が錯綜していると。いっぱい情報が溢れているなかで、自分が正しいという情報をきちっと見誤らない、その能力をつけましょうねっていうメッセージじゃないですか?」とリテラシーの問題にすり替え、坂上も「そうだと思います」と同調。「《騙されねぇぜ》って言葉がメディア批判みたいにとられても仕方がないんだけども、お前ら騙されんなよ、ってことでしょ? ちゃんと精査しろよ自分のなかで、っていう」と、坂上は問題を視聴者に丸投げしてしまったのだ。
たしかに、坂上は長渕と同様に、昨年9月の同番組で「(安保法案は)僕、大反対なんですね」と言い切り、スタジオが凍り付くなかで「いまだからこそ、武器持たないで憲法9条持ってりゃいいんじゃないの? だって、被爆国なんだから。被爆国にしかできないことあるわけで」と語っている。他のワイドショーが安倍政権のスピーカーと化していた状況で、はっきりと反対すべきものは反対だと口にする。あのときの坂上の態度は、今回の長渕のパフォーマンスにも通じるものがあった。だが、今回の長渕から発せられた「ワイドショーはちゃんとしろよ」という批判が、坂上にはどうやら届かなかったらしい。
繰り返すが、長渕の主張は「かしこい視聴者になれ」なんてことではない。オリンピックで浮かれる前にマスコミは報じるべきことがあるだろう、ということだ。あそこまで言われて何を批判されているのかもわからないようでは、この国のワイドショーに期待するほうがバカなのかもしれない。
(編集部)
最終更新:2017.11.12 01:50