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石橋貴明の番組が「下品」「低俗」とBPO審議に…「表現の自由」と「規制」はどうあるべきなのか

 しかし、一方でお笑いの「下品さ」への取り締まりを厳しくすることは果たして正しいことなのだろうか?

 周知の通り、BPOは検閲機関ではなく、言論と表現の自由に対する公権力からの介入を防ぐことや、放送倫理上の問題に対処すること、視聴者や出演者の基本的人権を守ることなどを目的につくられた自主規制のための第三者機関だ。その通達に強制力はなく、判断に関しては各々のテレビ局に任せられている。しかし、現在の番組制作現場においてBPOは、そういった枠組みを超えたかなり強力な力をもっている。

「週刊プレイボーイ」(集英社)16年11月28日号の取材に答えている某キー局のプロデューサーはこのように話す。

「BPOも『検閲機関』にならないよう注意しています。例えば、審議を経て番組に意見を言う際も、『下品な表現で不快にさせないよう、気をつけましょう』といったやわらかい表現で声明を出すだけ。でも、それを見た各局の制作現場は、自分の番組がBPOで問題にされないよう、そのときBPOが指摘した以上の自主規制をするようになる。その“空気”に現場が支配されていくんです」

 番組制作サイドがBPOの審議入りをここまで恐れるのは理由がある。「SAPIO」(小学館)15年5月号のインタビューに応じているキー局の情報番組スタッフはこう語る。

「BPOは検証のうえで『問題なし』とするケースも多いんですが、番組側は『BPOに申し立て』というニュースが報じられること自体を気にするようになっています。ワイドショーや情報番組は主婦層がメインの視聴者になるので、スポンサーも保険会社や洗剤、化粧品などイメージ重視の企業が多い。そういった会社は、実は視聴率よりも番組イメージのほうにうるさい。『BPOに申し立て』と報じられると、それだけで番組イメージが損なわれるので、スポンサーが嫌がるんです。しばらく経って『問題なし』という結果だったとしても、それは新聞には小さくしか載りませんから」

 こういった裏事情は一般の視聴者にも広く知れ渡っており、それがいわゆる「モンスタークレーマー」といった人たちに利用されている状況もあると、前出「週刊プレイボーイ」に出たプロデューサーは嘆く。

「その(引用者注:クレーマーの)力がどんどん肥大化している。彼らの新しい“武器”はBPOとSNS。特にモンスタークレーマーは、このふたつを利用すれば、テレビ局に手っ取り早くダメージを与えられることを覚えてしまった」

 伝説のポルノ雑誌「ハスラー」編集長であるラリー・フリントを主人公に、「表現の自由」をめぐって最高裁まで争った実話をもとにした映画『ラリー・フリント』のなかにはこんなセリフがある。最高裁の舞台で勝訴を勝ち取るきっかけとなった、弁護士のアラン・アイザックマンによるスピーチである。

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