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『君の名は。』『シン・ゴジラ』ヒットは東宝ばかり…カンヌ受賞監督が嘆く東宝独占状態と映画業界の歪な構造

 こういった状況について、前掲「キネマ旬報」で深田監督はこう嘆く。

〈ある意味で政治的な検閲よりも苛烈な、経済的商業的な自主検閲である〉

 シネコンでかけて人を呼ぶことのできそうもない映画は、製作費も出なくなるし、まずもって上映できる映画館そのものもどんどんなくなっていく。こうして製作すること自体が難しくなっていくのだ。

〈市場原理主義に基づく新自由主義経済において自由を謳歌するのはごく一部の大手企業のみであったように、今日本のインディペンデント映画は歪つで排他的な業界構造の中、大手三社外に残った二割のパイを奪い合っている状況にある。結局そのしわ寄せは現場へと押し寄せ、保障のない不安的な生活や低賃金、長時間労働といった劣悪な撮影環境へと反映される。そこで最初に脱落するのは、経済的弱者や体力的弱者で、公正で自由な競争原理ならびに人材の多様性を保つことが困難となるのだ。映画の労働環境におけるジェンダーバランスの不均衡もこれと無縁ではないはずだ〉

 この状況が続けば、近い将来この国では、人気アイドルやスター俳優が出ている映画やハリウッドの大作映画以外観ることができなくなってしまうかもしれない。

 そんななか生き残りをかけたミニシアターは、映画評論家や映画製作スタッフをゲストに招いてのイベントを多く開いたり、併設カフェに力を入れて映画館以外の客を呼ぶことができるよう工夫をしたりと策を練っている。それは映画製作の現場でも同じで、監督自らクラウドファンディングを呼びかけて製作資金を集めるといった光景もよく見られるようになった。

 独立問題で芸能界を干された“のん”こと能年玲奈が主演の声優を務めたことでも話題のアニメ映画『この世界の片隅に』も、クラウドファンディングによって制作が実現したものだ。

 とはいっても、これらの策は自転車操業の一時的な助けにはなっても、抜本的な改革にはなっていない。ミニシアターブームのときの映画界の活況を取り戻すためにはどうすればいいのだろうか。

 深田監督は「キネマ旬報」にこんな言葉を残している。

〈映画監督は、それぞれ局地戦を戦いながら、同時にいかにして業界全体が連携し持続的に底上げを図れるようなシステムを作れるか、考えていかなくてはいけない。大変だけど、大変やりがいのある仕事でもある〉
(新田 樹)

最終更新:2017.11.12 02:20

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