医療用や産業用の大麻解禁、もしくはそれを扱っていた人々が次々と逮捕される。これらは決して偶然ではない。その背景について、麻薬の取り締まりに詳しいジャーナリストはこう証言する。
「今回の高樹さんの逮捕に象徴されるように、日本では大麻はまるで覚せい剤と同様の違法薬物という認識が強いようですが、国際的には危険な麻薬という認識ではありません。ドイツ、チェコ、フィンランド、カナダ、オーストリアなどの欧米各国では医療用大麻は合法化され、アメリカでも25州とワシントン自治区で合法化されています。世界的にも研究が進んでいる状況で、その考えはもちろん日本にも波及しつつある。しかし日本当局、とくに厚生局麻薬取締部はこの動きに大きな警戒心を抱いているのです」
厚生労働省の地方厚生局麻薬取締部の麻薬Gメン。警察とは違い、厚生労働大臣の指揮監督を受けて全国9地区に存在する。そこでは司法警察員の身分と権利を持つ「特別司法警察官」が国内だけでなく、海外からの薬物押収も行っている。2016年現在、その人数は296人だ。しかも近年の危険ドラッグ(脱法ドラッグ)の蔓延との理由から、15年1月には麻取部の体制を強化、専任の取締官を16人から41人と約2.5倍の増員をするなどの組織強化を行った。
だが一方で、麻取部が扱う大麻に関しては解禁の動きが世界的に活発となっている。
先述のとおり、高樹容疑者は、これまで医療用大麻の解禁を訴えてきた人物であり、かつ発信力もある元女優でもある。11年頃から医療用大麻解禁を訴え、石垣島に移住し、12年10月には芸能界を事実上引退し、その活動に専念している。
ブログなどでも「大麻は持続可能な暮らしをサポートする大切な天然資源」「お酒、たばこ、チョコレートよりも安心で安全」などと主張、また医療用としても認知症予防に期待できるとして「日本の法律は厳しく、麻薬と誤解を受けている。医療用大麻は世界で使われているが、我が国では研究すら厳しい」「海外の立証が真実なら、私たちの国で行われていることは、人権侵害にもつながるのではないか」と、日本の大麻政策を批判する主張も発信している。
さらに今年7月には落選したものの、参院選に大麻取締法の改正を訴えて「新党改革」から出馬もした。参院選落選以降も、その活動を活発化。10月7日には『爆報!THEフライデー』(TBS)に出演し、同居人たちと共に大麻解禁を訴えている。
また10月5日に逮捕された上野容疑者も、その支援者の一人が安倍首相の妻である昭恵夫人だったことから大きな注目を集めていた。本サイトでも報じているが、昭恵夫人は医療用大麻の可能性や町おこしに積極的で、15年7月3日のFacebookには「日本ではまだ認められていませんが、医療用としても大いに活用できると思っています」と上野容疑者を訪ねて大麻畑で微笑む写真をアップ。「SPA!」(扶桑社)15年12月15日号では、上野容疑者との対話が掲載されていたほどだ。彼もやはり、昭恵夫人の支援によるアピール力の高さから、目をつけられた可能性が高い。