「『警護』といっても、実態は戦闘にほかなりません。2ケタ単位、最悪3ケタの死者が出ることもあり得る。特に、今のまま自衛隊が戦えば、負傷者中の死者の比率が高くなることは避けられない。自衛隊は諸外国の軍隊のように救急救命の制度が整っておらず、医師法や薬事法の制約で衛生兵による現場での治療や薬の投与も十分にできない。演習場の近くに治療施設のある普段の訓練時とはまったく状況が違うのに、命を守る備えができていないのです」
現に、政府は「駆けつけ警護」の嚆矢とする南スーダンは、内戦により多数の市民が巻き込まれるなど治安が悪化しており、今年7月にも首都ジェバで政府軍と反政府軍の大規模な戦闘が発生、兵士や市民300人以上が死亡したとみられている。しかもこのとき、陸上自衛隊の宿営地からたった100メートル先の地点で銃撃戦が行われ、その流れ弾の弾頭が宿営地内で複数発見されたことも判明している。まさに自衛隊が戦闘に巻きこまれる一歩手前だったのだ。
「駆けつけ警護」の任務が付与されれば、こうした大規模戦闘の最中に、日本の自衛隊が武器を持って突入することだってありえるのだ。実際、前述の『報ステ』のなかでは、現地で取材を続けるジャーナリストのヒバ・モーガン氏がこのようにVTRのなかで語っていた。
「PKO部隊を攻撃する勢力には、ガーナ人もルワンダ人も日本人も大きな違いはない」
「実際に(PKO部隊が)攻撃されたこともある」
PKO部隊まで攻撃を受ける可能性があるなか、さらに「駆けつけ警護」と称して武器を持ち、武装勢力と対峙すれ戦闘はさけられない。安倍首相は昨年の安保国会で“自衛隊のリスク増大”を頑なに否定し続けたが、それがいかに詭弁であったか今にわかる。そして、わかったときには、自衛隊員の尊い命は奪われているのだ。
しかも、現在の日本のPKO参加自体、明らかに「参加5原則」の〈紛争当事者の間で停戦合意が成立していること〉を満たしていないとしか思えない。前述の通り、南スーダンは紛争地域にほかならず、停戦合意などあってないようなものだ。
また、〈中立的立場を厳守すること〉という条件もすでに外れかけていると言える。先月、国連安保理は4000人規模の部隊を南スーダンに派遣する決定を下したが、この部隊には、任務遂行に「必要なあらゆる手段を行使」する権限が与えられ、現地政府に対しても国連施設や民間人への攻撃準備があれば武力行使を行えるとした。