春日野晴子『DVシェルターの女たち』(彩図社)
内閣府が発表したDVに関する調査報告によると、配偶者から何らかの暴力を受けた経験のある女性は現在3割にまで達し、2014年度には配偶者暴力相談支援センターへの相談件数も初めて10万件を突破した。02年度には約3万5000件であったことを考えると、大変な増加傾向である。
とはいえ、公的機関での保護件数は、02年度に約1万件で、13年度は約1万2000件と、DV被害者は増加しているのにも関わらず、ほとんど保護されていないという状況がある。そのため、現在、「DVシェルター」の一般認知度を早急に増やす必要があると叫ばれている。
DVシェルターとは、暴力を受けた女性を一時的に保護する施設のことで、各都道府県に最低でも1カ所は設置することが義務づけられている。このDVシェルターは暴力を振るう配偶者が連れ戻しに乗り込んでくることを防ぐため、場所は一般に明かされておらず、施設内での生活も秘密のベールに包まれていた。
そんなことも一般認知がなかなか広がらない原因になっているのだが、自身も元夫からのDV被害を受け、DVシェルターに入所した経験をもつ春日野晴子氏による著書『DVシェルターの女たち』(彩図社)には、これまでほとんど明かされることのなかったDVシェルターの実情が明かされている。
歯が折れるほど顔を殴られたり、階段から突き落とされるといった暴力を元夫から継続的に受けた春日野氏はその被害を警察に相談。家を飛び出すことになる。
そして、警察車両のライトバンに乗せられて辿り着いたのは、図書館のような白いタイル張りの3階建ての建物だった。もちろん、シェルターであることを示すような看板などは掲げられていない。ただ、多くの監視カメラが設置されていたり、敷地内に入るまでに何回も防犯システムを通らなければならないところから、この施設が普通の施設ではないということは伝わってくる。
ちなみに、入所中は通院や弁護士との面談時にのみ外出を許され、その際にシェルターの住所が記されたメモが渡されたことではじめてこのシェルターがどこにあるのかを知ることができたという。この住所が書かれたメモはシェルターに戻ったら職員に返却しなければならず、それほどまでにシェルターの場所は機密事項なのである。