コン君のように日本で亡くなるベトナム留学生は相次いでいるといわれるが、彼らが働くのはいずれも日本人が嫌がる長時間に渡る夜勤の肉体労働だ。
「現在、日本で最底辺の仕事に就き、最も悲惨な暮らしを強いられている外国人は、出稼ぎ目的の“偽装留学生”たちだと断言できる」
多額の借金を背負い、実習生もやらない徹夜の掛け持ち重労働を行う留学生たち。しかし、彼らには、救いの手がさしのべられないどころか、あくまで自主的に来日した“留学生”であり、働くための偽装留学だという理由で自己責任、自業自得という批判にさらされている。
だが、その裏を見れば、自業自得などと片付けられるものでないことはすぐ分かる。なぜなら、留学生急増の背景には日本の“国策”が存在するからだ。
「日本は今、ベトナムのような発展途上国の若者でも留学生として簡単に受け入れる。その背景にあるのが、政府が2020年の達成を目指す『留学生30万人計画』だ」
「留学生30万人計画」——これは福田康夫政権時の2008年に提唱され、安倍政権下でも「成長戦略のひとつ」に掲げられている政策だ。だが留学生受入数が最も多い米国で約78万人、2位の英国で42万人、英語圏でない4位のフランスは24万人程度という数字を考えれば日本の30万人はあまりに高いハードルだ。
しかも日中の関係悪化や、11年の福島原発事故の影響などで中国人留学生が減少したことなどで、政府は禁じ手を使った。安倍政権になってベトナム人への留学ビザ発給を緩和し、大盤振る舞いを始めたのだ。だがそれは単に「30万人達成」という政府の目標数値を実現するためだけではなかった。
「少子高齢化によって、日本の労働人口は減り続けている。とりわけ体力が必要で賃金の安い仕事は働き手が不足している。しかし、『単純労働』を目的に外国人が入国することは法律で許されない。そこで『実習生』や『留学生』と偽って、実質的には単純労働者が受け入れられているのだ」
つまり少子高齢化にある日本では単純労働が不足しているものの、日本政府は単純労働目的ではビザを発給せず、また安倍政権も移民の受け入れを繰り返し否定するなど消極的姿勢を貫いてきた。しかし本音では労働力は欲しい。その矛盾を解消すべき存在が“外国人留学生”という名の労働力ということだ。