だが、これははっきり言って異常事態だ。本来の国の仕事は、生活保護費を削ることではなく、貧困の原因となっている非正規労働の見直しや最低賃金の引き上げを行うことなのだ。現に、日本政府は2013年5月、国連の社会権規約委員会から〈生活保護につきまとうスティグマを解消〉するようにという勧告さえ受けているが、安倍政権にこれを是正する動きはまったく見られない。そればかりか、片山は相変わらず生活保護を「ずる貰い」などとテレビでがなり立てている。
そして、今回の騒動で片山がネットでの炎上に相乗りして主張した「貧乏人はつましく生活しろ」「貧乏人には趣味の支出も許さない」という貧困者バッシング……。もちろん、こうした世論形成の先には、憲法改正の問題が待っている。
事実、片山は2012年に発売した自著『正直者にやる気をなくさせる!? 福祉依存のインモラル』(オークラ出版)において、“生活保護の不正受給が起こるのは憲法のせい”と述べている。
〈現行憲法の第3章「国民の権利及び義務」は、日本人が従来持っていた美徳とは異なり、義務や責任を軽視する一方、権利と自由を強調するものです。(中略)現行憲法はまるで、責任や義務を果たすよりも権利と自由を要求することの方が重要だと言わんばかりなのです〉
同書の巻末にわざわざ自民党の憲法改正草案を掲載していることからもわかるように、本来なら政治が解決すべき貧困とその背景にある問題には取り組まず、正当な社会保障を訴える「権利」や「自由」を人びとから奪うことに主眼があるのだ。
つまり、今回の女子高生叩きは、自民党による“改憲後の世界”の先行事例でもあるのだろう。貧困をなくすことを第一に考えるべきなのに、「権利ばかり主張するな」と猛攻撃し、貧乏人は生活を厳しく監視される。そんな世の中で得をするのは政治家と一握りの富裕層だけだが、同じように我慢を強いられている人びとも同じようになって「自分たちはもっと我慢している!」と、権利を主張する人を叩くのである。
ともかく、貧困問題に対してこうした偏狭な世の中をつくり出した張本人である片山は、この国の“ガン”としか言いようがない。今後、この問題に対してどんなアクションを起こすつもりなのか、本サイトは“監視”していきたいと思う。
(編集部)
最終更新:2016.08.23 07:04