また、この緊急事態条項はナチスによって悪用されたことでワイマール憲法を停止させ、ヒトラーの独裁を招いた「国家緊急権」に酷似しているとの意見も多数ある。
緊急事態条項の危険性を特集した16年3月18日放送の『報道ステーション』(テレビ朝日)では、ワイマール憲法の権威であるドイツ・イエナ大学のミハエル・ドライアー教授がこのように述べている。
「この内容はワイマール憲法48条(国家緊急権)を思い起こさせます。内閣の一人の人間に利用される危険性があり、とても問題です。
一見、読むと無害に見えますし、他国と同じような緊急事態の規則にも見えますが、特に(議会や憲法裁判所などの)チェックが不十分に思えます。(中略)なぜ一人の人間、首相に権限を集中しなければならないのか。首相が(立法や首長への指示など)直接介入することができ、さらに首相自身が一定の財政支出まで出来る。民主主義の基本は「法の支配」で「人の支配」ではありません。人の支配は性善説が前提となっているが、良い人ばかりではない」
震災、テロ、東京オリンピック──政権と、彼らに寄り添うことで甘い汁を吸っている評論家たちは、こういった事例を並べて国民の危機感を煽ることで、危険な条文を憲法のなかに織り込もうとしている。加えて、そういった「基本的人権の制限もやむを得ない」などというトンデモ意見をテレビ放送局自らが提示する始末。毎度のことだが、メディアの政権へのおもねりも行き着くところまで来てしまったと思わせる宮家氏の発言であった。我々はこの嘘っぱちがまかり通ることのないよう、声をあげ続ける必要がある。
(編集部)
最終更新:2016.07.24 12:12