しかし、古市氏は小沢代表にだけ無用な攻撃を行ったわけではない。たとえば古市氏は、おおさか維新の会の松井一郎代表や新党改革の荒井広幸代表が民進党批判を行うと、岡田代表に対して「自民党が攻められるかと思ったら、岡田さんがさっきからずっと攻められていますよねえ」と発言。共産党も社民党も同じように与党の政策の問題点を追及していたにもかかわらず、まるで“与党よりも野党のほうが問題が多い”とミスリードするかのようだった。
その一方で、“質問・回答は30秒で行う”というルールのもとで行われているのに、安倍首相が「おふたりから質問があったので30秒30秒に」と言い出すと、古市氏は「じゃあ40秒くらいで」と甘い返答。
だいたい、街頭演説では一切、憲法改正に一言もふれていない安倍首相が、自分の応援部隊であるネトサポ(自民党ネットサポーターズクラブ)をバックにつけたニコニコ生放送であるため大船に乗った気分だったのか、この日は改憲についても言及。「どの条文が(改正すべきか)っていうことが決まってないんですから、この選挙においてはどの条文を変えていこうということは議論できないと申し上げている」などと選挙戦での争点隠しを開き直ったが、こうしたせっかくの議論も、前述した「小沢再婚発言」のお詫びのせいで腰を折られてしまった。
だが、こうした事態になることは、最初からわかっていたようなものだ。本サイトでは指摘しつづけているが、古市氏は2014年4月に「第2期クールジャパン推進会議」の委員に選ばれたことを機に、当時担当大臣の稲田朋美と急接近、昨年秋には稲田政調会長が仕切る自民党の勉強会「歴史を学び未来を考える本部」にもオブザーバーとして起用されるなど、自民党と距離を縮めているのだ。
さらには、安倍政権と接近して以降、古市氏は著作『だから日本はズレている』(新潮社)で、初出時にあった稲田氏を皮肉った記述を褒め言葉に改ざんしたり、『誰も戦争を教えてくれなかった』(講談社)という著作の文庫化に際して、タイトルを変更した上、歴史修正主義に寛容な言葉を付け加えたりと、明らかに政権に気を使って自分の言論を後退させている。
そのような政権寄りの人物が党首討論の司会を務める。政権に忖度するNHKが仕切る『日曜討論』も同様だが、その時点でまったくフェアではないのだ。
しかも嘆かわしいことに、橋本氏のような御用ジャーナリスト、古市氏のような御用学者はごまんといる。こうした人物がコメンテーターと称して政権を“補佐”し、安倍政権の欺瞞に満ちた政策の問題点がメディアに取り上げられないまま、参院選に突入しようとしているのだ。
(水井多賀子)
最終更新:2016.06.21 11:56