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『日本会議とは何か』著者・上杉聰インタビュー

「日本会議はものすごい“後ろめたさ”を抱えている」先駆的研究者・上杉聰が語る日本会議の最大の問題とは?

■日本会議の改憲「論拠」を打ち砕く

 このように日本会議は“結成元年”から「教育改革」の名のもと、畑を耕し、改憲の種をまいてきたのである。そして、約20年という時間を経て、ついにいま、安倍政権下でその悲願が結実する一歩手前までたどり着いた。上杉が力を込める。

「そう、行き着くのは憲法改正。日本会議について語るときに、これを避けては通れない。そして、その論拠を批判する必要もあります。彼らの改憲論理の中核は、育鵬社社会教科書にもあらわれている『押しつけ憲法論』です。戦前日本の皇国史観を排し、政教分離を徹底し、侵略戦争の手段を放棄した9条、これらからなる日本国憲法は過去の反省に基づいたものですが、日本会議はむしろ明治憲法的な価値観に懐かしさを感じている。ゆえに、日本国憲法に対し『日本人が作ったのではない』なる“神話”を用いて攻撃を繰り返すのです。しかし、いまの憲法が『日米合作』であることは誰がどう見てもあきらかです。それは、日本国憲法の最終案を見れば瞭然です」

 『日本会議とは何か』の44〜45ページに上杉は、国立公文書館に所蔵されている「日本国憲法最終案」の画像を大きく掲載した。

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『日本会議とは何か』44〜45ページより、国立公文書館所蔵の「日本国憲法最終案」の抜粋


 黒字になっているのは、GHQ案をもとに日本政府が帝国議会へ提出した改正案。その上から赤字で修正している大半の部分が、当時の衆議院と貴族院によるものだ。前文にも9条にも、徹底して細かな修正を加えていることがわかる。1946年10月7日、議会はこの最終案を枢密院へ提出。同年11月に日本国憲法は公布された。

「この文書こそ『日本会議とは何か』における“命”のページと言ってもいい。赤い文字は誰が書いたのか。日本のそれまでの歴史のなかで、もっとも民主的な選挙で選ばれた国会議員が書いたのですよ。日本人みんなが、書かせたんです。これを単純に『押し付け』だなんて言えるものですか。日本会議も安倍首相も“違憲の疑いをかけられている自衛隊を、はっきり新憲法に明記しよう”と叫びます。しかしマッカーサーのスタッフたちが草案を作成する過程で、すでに自衛戦争の放棄を取り消し、日本側も現行の9条の2項に《前項の目的を達するため》といういわゆる芦田修正を施しました。これが専守防衛の根拠です。だから、日本会議と安倍政権が仕掛ける世論誘導に騙されてはいけないし、護憲派はそうした改憲派の論拠を徹底してつぶしていくべき。いつまでも『憲法は自衛権をすべて否定している』という絶対平和主義の牧歌的な考え方のままでいれば、結果的に日本会議の思う壺ですよ」

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