そのへんについては、今後の捜査の進展を見守るしかないが、しかし、一方でAV業界に出演の強要がないかといえば、そんなことはないだろう。
実際、過去には、彼女たちとは対照的に「AV出演を強要された」と告白したAV女優やグラビアモデルも多数いる。たとえば、麻美ゆま『Re Start ~どんな時も自分を信じて~』(講談社)には、グラビアアイドル時代、仕事を辞めようとした彼女に対し事務所の人間が「AVやんなきゃ辞められないよ」と言い放ったエピソードが出てくるし、穂花『籠』(主婦の友社)にも、歌手になるために事務所に入った彼女がAV出演を拒否すると、「だって、契約したよね。口約束でも契約は契約だから。イヤだと言うなら、600万円払ってもらうから」といった言葉で脅された過去を綴っている。
また、昨年、アダルトビデオへの出演を拒否したタレントの女性が所属プロダクションから2400万円もの違約金を請求されるという裁判を起こされた。この女性は、当時高校生だった2011年にタレントとしてこのプロダクションにスカウトされ「営業委託契約」を締結したのだが、20歳になった時、AVへの出演を強要される。女性は最初断ったのだが、事務所サイドが違約金の話を持ち出してきたため、泣く泣く1本のみ出演。その後、契約解除を申し立てたところ、事務所は「残り9本の出演契約がある」と主張。違約金2400万円の裁判を提起してきたのだという。
結果としてその請求は東京地裁によって棄却されたが、この裁判は、AV出演を拒否する所属タレントに対して違約金で恫喝するプロダクションが存在していることを証明したともいえるだろう。
それと、もうひとつ気になるのは、「強制なんてない」と発言をしているAV女優たちのほとんどが、単体やキカタン(企画単体)を中心とした人気女優で、彼女たち自身にセルフプロデュース能力や発信力があることだ。
たしかに、彼女たちはきちんと自分で選び取ってAVの仕事をしているのだろうが、一方では、今でも、プロダクション側の説得に押し切られてAV出演してしまったというケースは少なくない。
「確かに、契約書はみんな交わしているけど、AVに出る女性の中には受動的で、押しに弱く、ほとんど契約書を読まないような娘も多い。口で説明を受けたことと違うことが書いてあっても気がつかない。約束と違う内容の撮影をされても、後で『サインしたでしょ』と言われると、押しきられてしまう。ほとんど泣き寝入りしてしまうから、表面に出ないだけでしょう」(AV業界に詳しいライター)
鈴木大介氏の著作『最貧困女子』(幻冬舎)も、「いわゆる三大NG現場(ハード SM、アナル、スカトロ)にいる、特にスカトロのAVに出ている女優の半数は知的障害だ」というAV関係者の証言を掲載していたが、ひどい内容の撮影には交渉能力のない女性を選び、半ば強制的にやらせている実態もある。
そういう意味では、やはり、今回、発言したAV女優には現実が見えていない部分があるのではないか。
先日、当サイトで紹介した、国際人権NGOの報告書の問題でも、同様の構図があった。