また、息子のことがかわいくて仕方がないらしい母は、現在の公邸ではなく私邸住まいを「本人にとっては良いのかもしれません」と庇い、こんなことまで言ってのけている。
「前回の政権では公邸に泊まることがほとんどでしたが、あそこはお化けが出るとよくいいますでしょう(笑)。いまは建て替えられておりますが、五・一五事件や二・二六事件の現場となった旧公邸では、亡くなった方もいらっしゃいますから、いろいろな怨念がこもった場所でもありますしね」
お化けが出るから私邸でいいじゃない……って、どれだけ親バカなのだろう。そもそも、災害などの非常事態や警備面、そのために使われる予算を考えても、総理大臣は公邸に入るべきだと思うが、このようにいまだ庇護を受けながら、安倍首相はぬくぬくと日々を送っているらしい。
そんな母は、政治家・晋三について、このようにアピールする。
「晋三が政治家になって、主人と似ていると感じるのは、一度言い出したらなかなか周りの言うことを聞かない、頑固なところです。それから、表面上は強く厳しいことを言っていても、裏では人のことを気遣うというのも、主人と似ていますね。晋三があるとき、古くからの支援者の方と衝突してしまったのですが、それでも何年か経つと、「あの人、あれからどうしてるかな。今度食事にでも誘おうかな」なんて言い出すのです」
いや、「周りの言うことを聞かない、頑固なところ」はよく知っているし、国民の声は聞かないわ国民の生活に気遣いもないわでたいへん困っているのだが、母はそんなことも理解せず、息子をこう弁護するのだ。
「昨年、晋三が安保法制の成立に一生懸命に取り組んでおりました。晋三も自らテレビに出ていろいろと説明をしておりましたが、安保法制の意味あいをまだ理解していない方たちが聞くのだから、もっと分かりやすい言い方をしなければならないのではないか、などと思いながら見ておりました」
安保法制に反対する人びとは、その「意味あい」をよーく理解して反対していた。しかし、この親子にはそんなことは理解できない。というのも、晋三氏と同じように洋子氏にとっても、「安保」によって最愛の父・岸信介が世間から叩かれたということが、いまも遺恨になっているからだ。
「大げさに聞こえるかもしれませんが、当時の父は本当に命がけで安保に取り組んでおりました。国民からあれほど反対されても、「国家のためにやっていることなのだから、後世の人々には絶対に理解してもらえる」としばしば申しておりました。
わたくしからしてみれば、国家のためにやっていることなのに、どうして理解してもらえないのかと思っておりました」