当の康子氏はこの報道に「全く心当たりがなく大変驚いている。当時の会社代表者は別の人で、連絡先として名前を使うことを認めた人がいなかったか調査する」としているが、実は、トランス社は加藤康子氏が学生時代の友人や今の夫と作ったオーナー会社だ。当時の会社代表者というのも「別の人」などではなく、投資家の夫である。もし、トランスパシフィックエデュケーションネットワークが英領バージン諸島に設立した会社に出資していたことがはっきりすれば、とても「知らなかった」ではすまないだろう。
そして、そうなれば、次に問題になるのは、やはり安倍首相の責任だ。実は、安倍首相と加藤康子氏の関係は、たまたま内閣参与に抜擢したというレベルのものではない
康子氏は故・加藤六月元農水相の長女だが、六月氏は安倍首相の父・晋太郎氏の四天王の筆頭で、康子氏の母は安倍首相の母・洋子氏と“姉妹”のように親しく、昔から家族ぐるみの付き合いをしていた。安倍氏と康子氏も幼い頃からしょっちゅう顔をあわせ、兄妹同様に育ったという。
また、冒頭でも指摘したように、康子氏は安倍首相の側近中の側近とも言われる加藤勝信「1億総活躍社会」担当相の夫人の姉でもある。というか、もともとは康子氏が勝信氏と婚約し、結婚する予定だった。だが、康子氏は留学に理由に加藤氏と婚約破棄。すると、どうしても加藤六月氏の地盤を継ぎたい勝信氏は康子氏の妹と結婚したのである。
そして、安倍首相の母親の洋子氏は、姉妹同然の大親友の娘である康子氏とその妹、娘婿の勝信氏を自分の子どものようにかわいがり、ことあるごとに安倍首相に引き立てるようプッシュしてきた。安倍首相が第二次安倍内閣で勝信氏を内閣官房副長官に、昨年、「1億総活躍社会」担当相に抜擢したのも母・洋子氏の強い推薦があったといわれている。
ようするに、母親の圧力と“華麗なる一族”の閨閥人事で閣僚を決めてしまっているというのは、いかにも安倍首相らしいが、それは康子氏の内閣参与就任も同様だった。
康子氏はもともと「一般財団法人産業遺産国民会議」の専務理事で、「明治日本の産業革命遺産」を世界遺産にする運動に10年間にわたって関わってきた。そして、2015年にこれが世界記憶遺産に登録されることになったことから、「産業遺産に関して、総理に対して情報提供や助言を行っていただく」として、内閣参与に抜擢された。