『僕がイスラム戦士になってシリアで戦ったわけ』(金曜日)
トルコで「イスラム国」(IS)の戦闘員に加わろうとしたとして身柄を拘束された日本人男性(24)が、3月24日、帰国した。報道によれば、携帯電話などの所持品からはISとのつながりを示す証拠は見つからず、男性は警察の取り調べに対して、「日本での生活が嫌になった。海外に行けばなんとかなると思った」などと語っているという。
どうやらこの男性がISの戦闘員になろうとしていたというのはガセらしい。
しかし、この男性とは別に、実際にトルコからシリア入りし、ジハード主義の反政府組織に加入した日本人男性がいることをご存知だろうか。
それは、鵜澤佳史という1988年生まれの男性だ。24歳だった2013年4月にトルコ南部から内戦状態のシリアに入国。反政府武力組織の一員として政府軍との戦闘に参加したという。そんな鵜澤氏が今年1月、『僕がイスラム戦士になってシリアで戦ったわけ』(金曜日)という本を上梓。反政府武力組織での生活、シリアに向かった理由を赤裸々に語っている。
両親にも秘密で反政府組織に加わった鵜澤氏だが、そもそも、当初は反政府組織の中でも世俗性が強く、アメリカやトルコが支援している「自由シリア軍」に参加するつもりだった。だが、自由シリア軍の報道官に「仏教徒じゃ戦うのは難しいな」と言われ、イスラム教に改宗。名前も「ハムザ」に変えた。
そして、同書によれば、現地の人間に案内されるがままに連れて行かれたのは自由シリア軍ではなく、「ムハンマド軍」という外国人中心の組織の拠点だったという。これは、カリフ制国家の再建を目指すサラフィー・ジハード主義の部隊で、ISもそのカテゴリーに入る(ただし、多くのサラフィー・ジハーディストのグループはアサド政権打倒のために自由シリア軍と共闘しており、ISは自由シリア軍とも他のサラフィー・ジハーディストとも敵対関係にある)。ともあれ、日本ではしばしば「イスラム過激派組織」とカテゴライズされるグループに、鵜澤氏は加入することになったのだ。
まず鵜澤氏は、ムハンマド軍の教育施設で礼拝やコーランなどの教育を受けた後、拠点へ戻り、AK47ライフルなどの装備を支給され、偵察任務や警備任務を経験する。「仲間」の亡骸を何人も目にしながら、激戦地アレッポ郊外に移動し、政府軍の勢力下にあるアレッポ中央刑務所の攻略作戦に従事した。