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いよいよ佳境『あさが来た』 広岡浅子が訴えていた“軍国主義批判”“反戦”のメッセージは描かれるのか?

 他方、クリスチャンだった浅子は公娼制度の反対論者で、廃娼運動にも参加していた。愛国婦人会では1904(明治37)年に芸妓を正式会員として入会させたことに批判が巻き起こったが、浅子も同様だった。だがそれは、職業に対する差別意識からではない。浅子はエッセイにこう綴っている。

〈体を売る女を何故責めるのか。彼女達は他に手段が無いからだ。では何故無いのか。それは男達が女子教育の機会を奪ったからだ〉(前出『広岡浅子語録』、以下同)

 ドラマのなかのあさとは違う、もっと強烈な、男たちへの批判的な眼差し。こうした見方は、男たちが主導する戦争に対しても同じだ。第一次世界大戦で連合国に加わった日本、そしてその軍国主義に、浅子は強く異議を唱えている。

〈果して連合国が口に唱えるような軍国主義の撲滅ということが、その戦争の動機であろうか。もしもこの精神に彼らが立っているとすれば、天の神を知らない我が国民はどうするつもりであるか。なんのために戦っているか〉
〈我国当局者の戦争の目的はどうだろう。果して彼らは純然たる天意を行われんがために軍備の拡張をなし、戦争をするというのであろうか。その相間に単なる目先の利益のため、すなわち行き当たりばったりに天下の事をなし、人道を進むというような心事ではあるまいか〉

 さらに浅子は、こうも述べる。

〈我国の有識者、為政者たちや、戦争のために富に酔ったところのいわゆる成金者の多くは、今後の世界においても戦乱は終息しないと信じているのである。ゆえに軍備の拡張、否、国防上の大計画をしなければならないと言っている様子である〉
〈この思想は必ずや、我国民の頽廃を来し、軍国主義の夢に亡びないとも限らない事情が伏在しているのではあるまいか〉

 もちろん、浅子はドラマでも描かれていたように、炭鉱事業に乗り出して軌道に乗せたが、実際にはそれは日清戦争の勝利による特需があってのこと。浅子とて、〈戦争のために富に酔った〉ことがないわけではない。ただ、ここまで踏み込んで国策批判ともいえる軍国主義を否定する女性はめずらしい存在であったはずだ。

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