3.11からちょうど5年。安倍政権が血道をあげる再稼働政策とともに、事故を導いた電力業界の責任や、背景にある原子力ムラの構造を追及しようとする報道も、かなり低調になっている。そのタイミングで班目元委員長の「天罰」発言が飛び出したのは、偶然ではない。こうした、本来は原発の危険性を指摘する立場にある人物の無責任な姿勢は、実際、現在の原子力規制委にも受け継がれているように見える。
昨年夏の桜島噴火の際、原子力規制員委は、近隣に位置する川内原発が噴火によって壊滅的な被害を受ける可能性が指摘されているにもかかわらず、川内原発が稼動している数十年の間に噴火は来ないなどとして、再稼働を認めた。しかも、会見の場で記者から噴火リスクについて問われた田中俊一委員長は、明確な根拠を示さないまま「もう答えてもしようがないから、やめましょう」などと言って、一方的に質疑応答を打ち切ってしまった。
また先日、裁判所は電気系統のトラブルが原因で再稼働から3日後に緊急停止した高浜原発について、3号機と4号機の運転差し止め仮処分の判断を下した。福島第1原発の事故原因がまだ判明していないことから、新規制基準は安全への配慮が不十分だとし、関電が安全対策を強化したとする立証の不足が指摘されたのだ。しかし、これに関しても田中委員長は定例会見で、新規制基準について「現在の基準が世界最高レベルに近付いているという認識を変える必要はない」として一顧だにしなかった。その開き直り方は、まさに“第二の班目春樹”と言っていい。
事故や災害のリスクを指摘する声に耳を貸さず、安倍政権の原発政策を後押しするだけの原子力規制委。今後、原発が再び大事故を起こしたとしても、おそらく田中委員長は「新基準は世界最高水準だった。想定外だった」と繰り返すだろう。
いずれにせよ、もしも原発事故によって「天罰」がくだるべき人たちがいるのならば、それは、リスクを顧みず原発を推進してきた班目氏や田中委員長、そしてこれに異を唱えず政府の犬となっている産経や読売のような御用メディアのほうではあるまいか。
(宮島みつや)
最終更新:2017.11.24 08:31