しかも、卑劣なことに、くだんの署名用紙には、上述した祭政一致、国家神道復活の目的などは一切書かれていない。それどころか、現在の憲法がどのように変わる可能性があるのか自体、まったく記述がないのである。「賛同署名のお願い」と題されたそのA4の用紙に書かれているのはこれだけだ。
〈憲法の良い所は守り、相応しくなくなった所は改め、憲法の前文に日本らしさを表現し、美しい国土を守り、家族が心豊かに生活できる社会をつくりましょう。誇りある日本と子供たちの未来のために…〉
日本らしさ、美しい国土、家族が心豊かに……そんな抽象的な美辞麗句を並べ立て、なんとなくポジティヴな印象だけ与えて署名を募っているのだ。神社本庁が目論む本質はネグられたまま、署名の“数”だけを増やし、その数を既成事実として改憲の機運を拡大させていくつもりなのだろう。
はたしてこんなことが許されるのか。改めて言うまでもなく、神社というのは、そのへんの新興宗教団体とはわけがちがう。初詣、七五三、夏祭り、秋祭りなどは、大衆の生活に根付き、それこそ「社会的儀礼又は習俗的行為」となっている。そこに、無音で改憲という最も大きな政治イシューを持ち込み、説明もないまま賛同の署名をさせようとする。このやり方はほとんど詐欺ではないか。
そもそも、神社本庁という宗教法人が政権と一体化するかたちで改憲というあきらかな政治運動をしていること自体、憲法20条に反している可能性もある。本サイトは改憲を目論むこの極右政治集団の動きを、今後も徹底追及していくつもりだ。
(梶田陽介)
最終更新:2016.06.21 02:13