〈自民党が変われば全部変わっちゃうんだから、自民党を変えるのが一番早いんだ。俺も自民党を出なかったから郵政民営化ができた。原発ゼロもそう〉
野党の関係者が脱原発を言うのは当たり前で新味がないが、自民党のしかも元首相の自分が言うから、みんながビックリするのだとも言う。だから、野党との連携も眼中にない。
14年に脱原発の「志」を同じくする細川護熙元首相とタッグを組んで東京都知事選に打って出た。晴れの日も豪雪の日も、都内数十カ所の応援演説で小泉は「原発即ゼロ」と吠えまくった。結果は、共産党が推した宇都宮健児にも後塵を排する3位だったが、当時のマスコミの多くはこれをきっかけに小泉が政治の世界に戻ってくるのではないかと書きたてた。都知事選後も、山口県、滋賀県、福島県と知事選が控え、ここにも小泉&細川コンビが乗り込んで野党候補の応援に回るのでは、と。「脱原発新党」との声まであったが、小泉が動くことはなかった。
今回の文藝春秋のインタビューでも〈選挙はもうしない。かかわらない〉と断言している。常井記者が、同じ脱原発を掲げる民主党の菅直人、鳩山由紀夫両元首相はどうかと水を向けるが、
〈でも、一緒にやると、元総理四人じゃおかしいから、どうなのかね。でもね、細川さんと私は保守政治家だからいいんじゃないの。やっぱり民主党の二人とは違うんだよ〉
とそっけない。では、同じ保守の小沢一郎はどうかと問うと、
〈それはまた別だよ。別々にやったほうがいい。私の支持者には小沢アレルギーがある。小沢を支持する人には小泉アレルギーがある。プラスになるとは限らない〉
〈(小沢さんも)自分の党があんなに小さくなる前にやらなきゃ。脱原発にしても民主党政権時代にやらないと駄目だ〉
と言う。やはり現実の政治を動かすにはリアルなチカラが必要だというのである。そこで小泉が繰り返し言及するのが“総理の権力”である。