「アリさんマークの引越社」公式サイトより
ブラック企業大賞2015に、コンビニ最大手のセブンイレブンが選ばれたものの、メディアタブーによって、まったくどこにも報道されない状態が続いている。セブンイレブンに対するメディアの弱腰については別稿でレポートするつもりだが、それとは別に、ブラック企業大賞にノミネートされた“超ブラック企業”を擁護するおかしな報道が登場した。
明日発売の「週刊SPA!」(扶桑社)12月8日号が「ブラック企業大賞はただの企業イジメ」と題して、同賞にノミネートされていた「アリさんマークの引越社」の井ノ口晃平副社長のインタビューを掲載しているのだが、デジタル版をみると、ブラック企業大賞へのこんなデマ攻撃がそのまま掲載されていたのだ。
「ブラック企業大賞を構成する実行委員にはジャーナリストやNPO法人代表、弁護士、ユニオン関係者などが名を連ねています。社会正義の名の下に、ブラック企業大賞をエサに企業恐喝まがいの行為をして、金銭を要求することが真の目的なのかもしれません」
たしかに、ブラック企業大賞の実行委員には、ジャーナリストやNPO法人代表、弁護士、ユニオン関係者などが名を連ねているが、彼らの多くは、労働被害や非正規労働、貧困、格差問題に取り組んでいる人たちで、このプロジェクトにも全員ボランティアで参加している。企業恐喝なんてありえないし、そんなことができる組織形態でもない。
実行委員の一人である河添誠氏(都留文科大学非常勤講師)もこの記事に呆れ返る。
「最初に読んだときは唖然としました。いったい何を根拠に言っているのか、まったくわからない。もし、私たちが企業恐喝をしているというなら、証拠を出せ、と言いたいですよ。許しがたい言いがかりです。この副社長もそうですが、デタラメをそのまま掲載する『SPA!』も雑誌としてどうかと思う。こちらに一切取材のないまま、この副社長の言い分を一方的に垂れ流すというのはおかしい。論評ならまだしも、『企業恐喝』なんていう明らかな事実無根の誹謗中傷をそのまま取材もせずに活字にするなんてことが許されるのか。
『SPA!』はそもそも、スタンスがおかしいですよ。『アリさんマークの引越社』は現在、社員に対して多くの不当な行為を行っており、今それを追及されている会社です。労働組合に加入したというだけで見せしめに営業からシュレッダー係という追い出し部屋に異動させ、その社員を中傷するチラシを社内に貼り出す。しかも、この不当な状況は今もまったく改善されていない。ところが、『SPA!』はそのことをほとんど批判せずに、それを批判しているブラック企業大賞の側に対する事実無根の中傷を裏も取らずに垂れ流している。非常にゆがんだ記事です。
本当はバカバカしくて相手にもしたくないですが、明らかな名誉毀損ですし、こういうデマを信用されても困るので、場合によっては法的対応も考えたいと思っています」