また、AV誕生から現在までの35年は、事務所やメーカーなどAVをつくる会社が変わっていくのと同時に、出演するモデルのパーソナリティーも変化していった35年だった。まず、黎明期のAVに出ていた女優たちはどんな人たちだったのか? 二人はこう振り返る。
〈松尾 昔のAVって世間からひどい目で見られてたんです。風俗嬢より格下で、「AV出たら人生終わり」みたいな。
山下 女のコにも「やらされてる感」があって。好きこのんで出てる人はいなかったと思う。山師みたいな人が女を連れてきたりしてたよね。活動期間も短かったし、季節をまたぐのはひと握りでしたよ。
松尾 偏見じゃなく、金銭的な問題とか家庭環境の問題とか、すごく不幸な境遇の人が多かったように思いますね〉(9月7日号より)
吉沢明歩やRioのように10年近く活動し続ける女優がいたり、蒼井そらは中国で国民的スターとなっていたり、紗倉まながトヨタ自動車のサイトで連載をもっていたりと、AV女優がアンダーグラウンドな世界から抜け出し、芸能界でもバリバリ活躍する現在から見ると、「AV出たら人生終わり」と言われていた時代は隔世の感がある。では、そのような状況はいつ頃から変わり始めたのか? その発端はダイヤルQ2が一世を風靡し、若い女性たちの「性」に対する意識が変わりだした90年代初頭にあると彼らは言う。
〈山下 企画AVでも90年代初頭からは普通の女のコの出演が増えていった印象ですね。それまでは社会から外れた人が出るのがAVだったのに、テレビや雑誌の影響で明るい大学生がやって来た(笑)〉(10月12日号より)
この傾向は「援助交際」が社会問題となる90年代中盤以降ますます加速していく。
〈松尾 少なくとも「AV出たら人生終わり」っていうような空気はないですね。世紀末ぐらいから、ふわっとなんとなくAVに出演する女のコが現れたように思うんです〉(11月2日号より)
AV業界に飛び込んでくるモデルが「普通っぽい」人になるにつれ、二人はさらに、「女優の内面」の変化にも気づいたと語る。
〈松尾 00年代中盤は、監督面接や現場で会う女優の言動も変わってきたんですよ。
(中略)
山下 生い立ちだの男性遍歴だの、とうとうと自分語りするコが増えてね。
松尾 80年代、90年代はインタビューしても女が口を割らないから大変で。けど00年代中盤はこっちが黙ってても女が勝手にしゃべるようになった〉(11月9日号より)